≪内容≫
2000年3月。舞台監督の川村正治と雑誌編集者の妻・美江は、横浜港を望む高台のテラスハウス・双葉荘に移り住む。ある日、正治は舞台監督の仕事を退職し、自宅でのライター業を始めることに。ある朝、美江を送り出した正治は、家の中に不穏な気配を感じる。それは26年前に双葉荘の同じ部屋に住んでいた倉田誠司という画家の“幻影”だった…。2つの時代をつなぐ珠玉のロマンティックミステリー。
これホラーで出てきたんですが、心温まるミステリーものでした。世代を越えたお話ってこう・・・いいですよね。(語彙力)
時を越え巡り合う人
私は運命の人、というのを割と信じている人間で、しかもその人は歴史上の人物だったり故人だったりまあ何でもいいのです。恋に限らず、自分の人生を変えてしまうような人間を運命の人、と呼んでいるのです。
で、この作品はまさにそういう"運命の人"が実際に可視化して一つの謎を解き明かす、というお話だと思うのです。
舞台監督の川村正治(市原隼人)とその妻が、双葉荘というメゾネットかな?テラスハウス?に引っ越してきた。大家さんはなぜか今時古くさいけれど手渡しで家賃を渡す約束をしてきて奇妙に思うが二人はそこを新居に決める。
ほどなく正治は仕事に限界を感じフリーライターとして日中を家で過ごすようになる。実は、その家の中にはセピアの背景に生きるもう一人の住民がいたのだった。
彼は倉田誠司(中村倫也)という画家だった。二人は意気投合筆談で語りあう。二人には共通点があって、それは収入のほとんどを妻に賄ってもらっている、という点だった。
二人はお互いを励まし合いながら地道に働くが、ある日家の中で起きた惨劇を正治が見てしまい、そこから倉田とは会えなくなってしまう。そこで起きたことはセピア色で正治が介入することは出来ずただ傍観するしかできなかった正治は、倉田への申し訳なさもあり過去に起きた真実を改めて追求していくのだった。
正治が闇に葬られた事件の真実を見つけたことで、倉田とその妻はやっと再会することができました。二人が出会うためには正治が必要不可欠だった、というのが「運命」なのですね・・・。
人って生きていると、身体的に生きている人間しか見えなくなってしまうと思うのですが、「私たちの胸にあの想いは刻まれている」とかさ「一生忘れない」とか、そういう言葉があるように今心臓が動いている人間だけの世界なんてないと思うんです。
私たちは歴史の一部だし、永遠の中の一瞬の存在だから本当はもっと過去や未来を行き来できる力があるんじゃないのかな?と思ったりするのです。それが可視化された本作は非常に胸が温かくなる一作でした。