深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】蛇のひと~この世で本当に辛いのは、人に裁かれないことではなくて誰からも気づかれないことなのだ~

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《内容》

第2回WOWOWシナリオ大賞を受賞した脚本を映像化し、WOWOWでのTV放映後に劇場公開されたサスペンス。陽子の勤める会社の部長が自殺し、同時に課長の今西が失踪した。今西の捜索を依頼された陽子は、彼の背後関係を探るが…。

 

 思いつきそうで思いつかないお話だなぁと思いました。こういう人ってたぶん身近にいるし、けっこうな割合でいそうな気がするんですよ。でも、言葉には表せないけど直感で「なんかおかしい気がする・・・」と思って何も言わずに離れる・・・そういうことを繰り返している気がする。

 そのおかしさを完璧に隠したのが「蛇のひと」。

 

人を不幸にできる能力

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 私は性善説を信じているけれど、だからって

24時間365日、いついかなるときも善人だったらそんなの人間ではない!!

 と思っている。まぁ、そもそも性善説はそんなこと言ってないんだけどさ、ストイックな人とか完璧主義な人はちょっとしたズルとか汚さを許せないときがあるでしょ?他人のせこさよりも自分がせこくなったときの罪悪感ったら半端ないよね。

 

 ついでに言うと、どれだけSNSで天真爛漫にふるまっている人も、職場で常に明るい人気者のあの人も、誰からも愛されていて美人で収入があって自分が欲しいものを全部持っている人だって邪心はあるのだ。

 だけど、その邪心は意外とバレやすい。

 「あざとい」とか「マウンティング」とか「におわせ」とかね。人は人の邪心に敏感だから。でも、バレることは救いでもあり共感でもある。気づく人の心のどこかにはその要素を理解できるものがあるから。

 だから、気づかれない邪心というのは孤独なのだ。

 誰かに止めてほしくても気づいてほしくてもその願いは叶わない。

 この世で本当に辛いのは、人に裁かれないことではなくて誰からも気づかれないことなのだとこの映画を見て思う。

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  陽子(永作博美)は自分が働く会社の部長が自殺して、同時に課長の今西(西島秀俊)が失踪したことにより、なぜか今西の行方を見つける任務につかされる。

 ただのOLなのに刑事紛いなことが降りかかってきたのは、今西と陽子がデキているという雰囲気が社内に漂っていたからだった。

 しかし二人は全くそんな関係でもなかったし、陽子は恋人の話を今西にしていた。だが、業務命令なので今西を探すことに。二人の関係を危惧した会社が陽子と今西の口裏合わせを封じるために陽子にもう一人の社員つけた。

 こうして二人で今西探しに出た二人だったが、今西と関係のある人はみんな今西に問題を解決してもらっていたが、客観的にみると、それは解決ではなく不幸の始まりであることに二人は気づく・・・。

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 本当に欲しいものを見つけるためにとーくとーくとーまわりしてきたんだねぇ・・・。と思うような最後でした。

 持って生まれた才なのか、後天的に身につけたものなのかは定かではないけれど、いつだって誰かに取り上げられ続ける人生だと思ってしまったら先に戦意喪失させるのが得策だと思うのは賢さだと私は思ってしまいます。

蛇のひと

蛇のひと

  • 発売日: 2015/12/01
  • メディア: Prime Video
 

  ちなみに第8回WOWOWシナリオ大賞受賞作はこちら↓

双葉荘の友人

双葉荘の友人

  • メディア: Prime Video
 

 「双葉荘の友人」の記事を読む。

 なかなか面白い作品が多いんだなぁ、と思いました。