深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】ナンシー~誰かを助けられるような人間になりたいから嘘をつく~

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《内容》

息をのむサイコロジカル・スリラー
人付き合いが苦手なナンシーは、他人の関心を集めようと嘘ばかりついていた。ある日、彼女は5歳で行方不明になった娘を探す夫婦をTVで見かける。
その娘の30年後の似顔絵が自分と瓜二つなことに気づき接触を試みる…。息もできないサスペンスフルな展開、思わず漏れる嗚咽――。
だが、そこから予測できる顛末は、全て見事に裏切られる。[もう一つの人生]のその先に、この映画の類まれなる真価と輝きが待ち受けている。

 

ぇええええ!

どーゆーことー!?

と思うような映画でしたが、たまにはこういう意味不明な映画もいいですね。サイコロジカル・スリラーとは、確かにそうかもしれないですけど、この映画はもっと馴染みがあるものだと思います。

主人公・ナンシーは”他人の関心を集めようと嘘ばかりついていた”とあるけど、なんで嘘つくのかってこの映画の場合は、すごく純粋なもののように思いました。

 

誰かを助けられるような人間になりたい

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 主人公のナンシーは難病の母親と猫のポールと三人で暮らしている。派遣先の歯医者では、派遣は自由でいいね、という言葉通り自由な旅人を演じ、チャットで知り合った男性が亡くなった子供のことで胸を痛めていたら、妊婦を演じた。

 

 そうやって誰かの求めている人間を演じるナンシーだったが、母親には辛辣だった。病院に行きたいという言葉もダメだといい、母親のSOSを無視し続けた結果、母親はある朝冷たくなっていた。

 

 そうして一人になったとき、テレビで見た女性の顔が自分に似ていることに気づく。ナンシーはすぐにその女性を探しているという家族に連絡し、DNA検査に協力するのだが…。

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 迷子になった娘を探し続けている夫婦にとって、ナンシーは希望であり絶望でした。父はナンシーは娘ではないと気付きながら、妻の気のすむようにさせてやろうといった感じでしたが、妻はナンシーが自分の娘ではなくても受け入れたいという気持ちになっていました。

 

 嘘をついて、それがバレて人が離れてく。

 それがセオリーだったのに、DNA検査の結果が分かっているのにナンシーに変わらない対応を続ける妻・エレンによってナンシーは本当の自分を取り戻す。

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 CMや説明文では嘘のコミュニケーションしかとれないサイコみたいな書き方ですが、人って多かれ少なかれこういう嘘ついてるでしょ?と思ってる。

 話を盛る、のも嘘の派生みたいなもんじゃんか、と思ってる。そんで、真実言ったら扱いづらいみたいになって、ちょっと飾り付けたり隠したりして流せばいいのに、って思われたり言われたりしてさ。

 

 ナンシーはたくさんの嘘ついたけど、誰かを騙そうとか、傷つけようとか、そういうんじゃなくて、その人が一番求めてる人になりたかったんじゃないかな、って思いました。最後の狩猟事故のときのレスキューみたいに。

ナンシー(字幕版)

ナンシー(字幕版)

  • 発売日: 2020/07/06
  • メディア: Prime Video
 

  本当に騙したいだけなら、DNA検査の結果をきいたエレンを見た時点で家を出てるはず。だけど、それでもそのあとの散歩に一緒に行ったのは、エレンが求めてる娘じゃなくて、ナンシーとして行ったのだと、あのときからナンシーはナンシーだったのだと思いました。