《内容》
18歳の秋、わたしはあの子に近づくためなら何だってできた――
女性の底知れなさを描いたサスペンス
アムとサリーは大学中の視線を集める”最高の女の子”だった。学生寮でとある事件が起きるまでは――
事件から十四年、新たな人生を歩むアムのもとに同窓会の招待文と脅迫状が届く。
「あの夜わたしたちがしたことについて話がしたい」。
こんなものを寄こすのはサリーしかいない。そう考え同窓会に出席するも、サリーのもとにも同じ脅迫状が届いていた。
何者かがふたりの罪を暴こうというのだ。彼女たちが犯した罪とは?
最近、本屋にも相性があるということに気づきました。
この本は新宿紀伊國屋で買ったんですが、地元の本屋では全然ないんですよね。文庫なのに1720円(税抜)もする高価本でめっちゃ悩んだんですが、冒頭の文にひかれて購入。
ふたり一緒なら怖いものはなかった。緑あふれるキャンパスはふたりが支配する王国で、そこで開かれるパーティーの数々は、ふたりのためのものだった。
さて、この女子二人は桜庭一樹ルートか真梨幸子ルートかどっちかな?
自分では手の届かないものを犠牲に、欲しいものを手に入れた女性たちへ
オグデン教授は両の拳を振りあげ、熱っぽく一席ぶった。「登場人物を徹底的に再起不能にするには、その人物を何から何まで知っていなければならない。その人物にとって最も重要なものを知り、それを取りあげる。そうすれば意のままに動かすことができる。殺したっていい。すでに大事なものをすべて失くしているんだから」
主人公アムは大学の同窓会の手紙に動揺する。もうあの頃の私とは違う。優柔不断だけれど優しい夫がいる。彼は私の罪を知らないけれど、新しい私をまっすぐに愛してくれるから、私はあの頃言われていたようなひどい人間ではないと思っているのだ。
同窓会の手紙には返信せず無視を貫くアムだったが、しつこい誘いの手紙とパーティー好きの夫の詮索でアムは同窓会に夫と一緒に参加することとなる。
「ねえ、昔わたしがよく言ったこと覚えてる?」サリーはベルベットのようになめらかな声で言う。「ふたりでいれば、わたしたちはもっと恐ろしくなれるって。」
同窓会の手紙に書かれた
「あの夜わたしたちがしたことについて話がしたい」
という言葉。これを書いたのはサリーしかいないはず。あの夜、アムとサリーともう一人いたあの子のことに決まっている。
アムのルームメイトのフローラ。アムが運命を感じた男の子の彼女。あの頃、壊れたドラッグクイーンのサリーがアムの世界だった。サリーに認められたくてサリーの指名した男と寝たし、乱交パーティーにも何度も参加した。そんなアムの姿を悲しそうな目で追いかけるフローラ。
生き残るために体と心を消耗するアムとサリーとは対照的に清廉潔癖で何も失わずに手に入れ続けるフローラがあの頃のウェズリアン大学の日常だった。
不思議なことに、女は、露骨な悪女よりも、無自覚な同性を疎む傾向がある。多くのものに否定されながら、それを踏み越えるしかなかった女たちにとって、無自覚さは、奪われてしまったものの象徴だから。
(「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。/辻村深月」解説より)
フローラを徹底的に再起不能にするために、二人はフローラと彼氏の仲を引き裂こうとする。そうして選ばれなかった者という烙印を傷一つないフローラに焼き付けたかったのだ。
だが、それはアムが思っていたよりももっと取り返しのつかないことになっていく。埋葬された「あの夜わたしたちがしたこと」が何者かによって掘り起こされていく。衝撃のラストは読書だけではなく主人公のアムにとっても初めて知る真実なのだった。
こういう女のドロドロしたやつは日本に限ったことではないと思っていたけど、クスリだとかそういうパーティだとかは海外特有だなぁ、エグ・・・と思いながら読んでいました。眠れないな〜と0時前にパラってめくったが最後。朝の5時まで一気読みでした。