《内容》
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で働きだすように誘導し……。
えっ・・・ギャグ小説かなんか?
と思うくらいに面白い。ほんとに。
人の鼻をつまむな
むらさきのスカートの女がわたしの姉に似ている気がするということは、むらさきのスカートの女は、妹のわたしにも似ているということになるだろうか。ならないか。共通点なら、無いこともないのだ。あちらが「むらさきのスカートの女」なら、こちらはさしずめ「黄色いカーディガンの女」といったところだ。
語り手である「黄色いカーディガンの女」は町の異質な存在であるむらさきのスカートの女と友達になりたいと思っている。
むらさきのスカートの女の1日を観察し、住まいまでも知っている。そして自分の職場に面接に来るようなんとか仕向けるのだ。そうしてむらさきのスカートの女と同じバス通勤になった黄色いカーディガンの女は、彼女の右肩に乾涸びたご飯粒がついているのを目撃する。
じりじりと、少しずつ腕を伸ばしていき、むらさきのスカートの女の肩に付いたご飯粒まであとわずかという距離までわたしの指先が近づいた時だった。バスが急カーブに差しかかり、車体が左右に大きく揺れた。その拍子に、わたしはご飯粒ではなくて、むらさきのスカートの女の鼻をつまんでしまった。
「んがっ」
と、むらさきのスカートの女がまぬけな声を出した。
つまむなwwwwwwww
黄色いカーディガンの女はむらさきのスカートの女にキレられることを想定するが、むらさきのスカートの女がキレたのは痴漢にだった。この事件のせいで職場にも遅れることになり、事情を説明する際も痴漢のことだけを伝えて、鼻をつままれたことはむらさきのスカートの女は何も話さなかった。
わたしの聞いた限りでは、むらさきのスカートの女は一度も鼻をつままれた話をしていなかった。わたしは確かに鼻をつまんだはずなのだが。もしかして、わたしは鼻なんてつまんでいないのだろうか。それとも全然知らない人の鼻をつまんでしまったとか?わからない。とにかく、今のままでは、わたしのしたことが、無かったことになってしまう。
だから、もう一度つまんでみる。今度はもっとしっかり、爪が鼻の頭に食い込んで血が出るくらいまで。
だからつまむなwwwwwwww
黄色いカーディガンの女は何者なのか?と思うくらいむらさきのスカートの女の動向に詳しい。だが、直接むらさきのスカートの女には話しかけない。あくまでむらさきのスカートの女とその他の人たちの交流をみて読者に報告してくれるだけだ。
だが、最後、ここぞというときに黄色いカーディガンの女はむらさきのスカートの女には話しかける。鼻をつまむ話を上回る爆笑シーンなので、ぜひ未読の人は読んでもらいたい。
むらさきのスカートの女がやばいやつ、という感じで黄色いカーディガンの女が紹介するのだが、話が進むにつれ断然やばいのが黄色いカーディガンの女なのほんとおもろい。