≪内容≫
19歳のジェイは男と一夜をともにするが、その後、男が豹変。縛り付けられたジェイは「“それ”に殺される前に誰かにうつせ」と命令される。“それ”は人にうつすことができる。“それ”はうつされた者にしか見えない。“それ”はゆっくりと歩いて近づいてくる。“それ”はうつし相手が死んだら自分に戻ってくる。そして、“それ”に捕まったら必ず死が待っている。果たしてジェイは、いつ、どこで現れるかわからない“それ”の恐怖から逃げきることが出来るのかー。
ついてくる系ホラー
あのいつか見た宗教的なホラーを探しまわってるのだが全然ヒットしないぃ。んぼぼぼぼぉじゃないやつなんですが、これもまた違うものだった。
そして、これは怖くないです。似てるようなのだとこっちのが怖かった。(スピード感)
ただ、本作を見終わって、だからホラーって見るのやめられないんだよなぁ・・・としみじみ感じました。
エンタメ的ホラーではないので、よく分からない部分も多いのですが、ホラーって哲学なり正義なり何か熱いものから生まれてくる・・・と改めて思ったのでした。
19歳という限りなく透明に近いブルー
ずっと夢見てた
大人になってデートしたりドライブできる日を
イケてるカレシと手をつないで
ラジオを聴きながらキレイな道を車で走るの
きっと北のほうね
紅葉が始まってる
行き先は問題じゃなくて
自由が欲しかった
に続くのが「大人になった今 どこに行けば?」という台詞です。
女性は結構分かるんじゃないでしょうか。この言葉と似たような言葉が自分の中で生きていた時代があるのではないでしょうか。
主人公のジェイ19歳。初めての彼氏と初めての経験を終えて出てきた言葉でした。
↑この左側の間接照明めちゃくちゃ可愛くないですか。
大人になるということが、20歳でも18歳でもなくて、恋愛をするだけでもなくその先の行為が一つの関門だと思っていたんでしょう。そして、ジェイはその関門を越えた。なのに、行き先が分からない。
昔 親から8マイル通りを越えるのを禁じられてた
当時は理解できなかったけど
あそこは郊外と都市の境界線だったのね
でもバカみたいって思ってた
だって大人が一緒でも境界線を少し越えるだけで
親の許可が要るんだもん
大人になったジェイが追われることになった"それ"。
はたして"それ"の正体とは何なのか。
その答えになるものが、ジェイの友達が言った「だって大人が一緒でも境界線を少し越えるだけで親の許可が要るんだもん」だと思うのです。
生きることと死ぬこととはある意味では等価なのです
初夜の後下着だけで車イスに拘束され、お前にうつさせてもらったからお前も早く誰かと寝て感染させろとそのお相手に言われるというハードモード。
こんなの見ると、よく雑誌のコラムにある「終わった後彼氏が冷たいんです!すぐ寝ちゃうんです!」という声が可愛らしく思えてくる始末。
せめてワンピースまで着せろよ!!かわいそうだろうが!!!!怒
・・・と思ったけど、映画だからサービスショットなのかな・・・ジェイかわいいし・・・
"それ"じゃねえのかよ!というツッコミはおいといて・・・
ジェイは友達の協力を得て"それ"と戦います。
はたして、"それ"とは何なのか。
いきなり現れて自分に突進してくるんですが、周りには一切見えていないのです。
しかも、こいつの言うとおり、必ず歩きなのです。
ホラーなのに、見た目普通でしかも歩き・・・。これ見るといかにホラー作品の怖さがスピードと音響効果なのか分かる。
だから全然逃げれちゃうんですよ。
要は捕まらなきゃいいわけです。何に?死神に。
つまり、子供と大人の境界線を越えたジェイは死に向かうことにもなったのです。
「タイランド」で語られる「生きることと死ぬこととはある意味では等価なのですドクター」
実は冒頭6分くらいで、このメガネっ子が手に持ってるオシャンティな端末でドストエフスキーの「白痴」を読んでいるシーンが出てきます。
そして、最後にはこの子が「白痴」の中の一節を朗読する。
人は傷の痛みに死の瞬間まで苦しむ
だが最悪の苦痛は傷そのものではない
最悪の苦痛はあと1時間 あと10分 あと30秒で
そして今この瞬間に魂が肉体を離れ人でなくなると知ること
この世の最悪はそれが避けがたいと知ることだ
つまり、誰もが死ぬし、それから逃げることはできないのだーということです。
大人というのはそれから逃げることはできないのだということを知る、ということ。
そして年を重ねるごとにそれが近付いてくることも避けがたいことであり、逃げられないことと受け入れるしかない。
大人になるということは、守られる側から守る側になることでもある。
今までは見なくて済んだもの、見る前に大人が排除してくれてたものに自分たちが直面していかなければならない。
我々の世界にもいる"それ"は、映画に出てくるように擬人化していないけれど、確実にいる。それを表現したのが「イット・フォローズ」という作品なんじゃないのかなぁ、と思います。
プール×銃×血はブラック・ラグーン思い出しました。笑
この血が広がっていく映像もじわじわとキます。
割にホラーというか文学的に感じた作品でした。
やっぱりホラー面白い。