≪内容≫
延辺朝鮮族自治州でタクシー運転手を営むグナムは借金の取り立てに追われ、韓国に出稼ぎに行った妻とは音信が途絶えていた。借金を返そうと賭博に手を出し逃げ場を失ったグナムに、殺人請負業者ミョンは韓国へ行ってある人間を殺したら借金を帳消しにすると持ちかける。グナムは苦悩の末に、借金を返す為、そして妻に会いたい一心で密航船に乗り黄海を渡る…。しかし、そこで彼を待ち受けていたのは、深奥なる闇だった―。
思いがけずナ・ホンジン監督の長編映画を全て見てしまった。
出てくるキャストがほとんど同じなので、こういう感じは園子温監督作品と通じるものがある。
ていうか監督もっと映画作ってくれー!オワッチャタヨー!
血と金と狂犬病
パッケージの逃げている男は主人公のグナム。
本作の背景は延辺朝鮮族自治州という少数民族自治区域である。グナムは中国側に暮らしており、韓国で出稼ぎに行くために払った奥さんの偽造パスポート代という途方もない借金を背負っている。
しかし韓国で稼いでいる筈の奥さんからは連絡もないし、送金もない。韓国に会いに行くための手段もお金もない。
そんなグナムに朗報が。
この依頼を受ければ韓国に行ける。グナムは迷うけど結局密航船に乗ることを決意。
殺す男のことも調べながら妻を探すが、やっと見つけた彼女の部屋は荒らされていて、隣人の言うところでは男とケンカして一時間ほど前に出て行った、とのことだった。
一旦、殺しの案件に戻ることにするとなんとターゲットは他の人間に襲われて絶命していた。
ラッキーなグナムだが、親指を持って帰ってこいと言われていたため、現場に行き男の親指を切断。しかしそこには殺人犯がいてグナムはそいつと対決することになる。
そいつを倒し、親指をゲットしたところを運悪く、ターゲットの奥さんが目撃してしまう。すでに派手にやらかしていたため警察も到着。
殺していないのに生きているのがグナムだけなので、グナムは犯人として逃げる事になる。
なんとか逃げ切ったグナム。帰る船の場所にやってくるも、そこには何もない。
自分に依頼した社長も、この場所を紹介した男たちももぬけの殻で、グナムには犯していない罪だけが残った。
韓国にいる筈の奥さんにも会えず、故郷に残してきた母と娘の元にも帰れず途方に暮れるグナム。
しかもそんなときにテレビから流れてきたのは30代前半の朝鮮族の女性が「中国の夫の元へ帰る」と言ったことに逆上し男に殺されたというニュースだった。嫁の家で待ち伏せても一向に帰ってこず、報道に出ていた男は嫁の仕事を紹介した男に似ていた。
密入国者であり殺人に関与してしまったグナムは警察に行ける訳もなく、電話で容疑者と被害者の身元を聞こうとするも断られてしまう。
そこで金で雇った男に写真を渡して遺体を見てもらうことにしたら、それは自分の奥さんだったと告げられる。
グナムを騙した社長は、グナムに生きててもらっても困るため、手下を使って総出で殺そうとする。
この映画最大のみどころである。
グナムVSミョン社長と警察
肉弾戦からのカーアクションになるんですが、この映画で一体何台の車が大破したんかな?ってくらい派手にイっちゃってます。このチェイサーコンビほんと雰囲気あっていいです。
結局、大元の依頼人も出てくるんですけど、なんでターゲットを殺したかったかの理由がこれです。
グナムの奥さんが殺された理由もなんだか似たような感じだし、正直「え、そんなことでこれだけ大量の人間が死んだの・・・・」と思ってしまった。
しかも愛人って。奥さんじゃなくて愛人って。お前も奥さん裏切っとるやないかい。とか思うんですが・・・これだけ大騒ぎしてラストのネタバレがこれ。ある意味哀しすぎる、というか知りたくなかった情報。
俺が11歳の頃
狂犬病が流行した
うちの犬も狂犬病にかかり
最初に母犬を咬み殺し
さらに目につくものを
次々と咬み殺した町の人が叩き殺そうとしたが
逃げてしまった数日後 その犬は
やせ細った姿で現れた真っ黒な目に生気はなく
俺をじっと見たまま
ゆっくり倒れて死んだ俺は犬を町の裏に埋めたが
その晩 大人たちが
掘り起こして食っちまった
この狂犬病の話はそのままグナムのことなんだと思います。
狂犬病というのは殺人のことで、最初は委託殺人だった。だけどそれに関わったせいでもっとたくさんの人の血を浴びることになった。
グナムは逃げることに成功したけど、恐らくその目の生気は失われている。そして死んでもその身体が安寧な場所に留まることは許されず、堀り起こされ、死して尚喰らい尽くされてしまうのであった。
ナ・ホンジン監督と言ったらもう救われないバッドエンドの代名詞でもいいんじゃないかと思えるな。
ナ・ホンジン監督の他の作品はこちら↓
チェイサーもこの二人の対決すごかったな。