深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】gifted/ギフテッド~個性や才能がほんとうに人を幸せにするか?~

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≪内容≫

 フロリダの海辺の街で、ボートの修理をして生計を立てている独り身のフランク。彼は、天才数学者だったが志半ばで自殺してしまった姉の一人娘、メアリーを養っている。彼女は、先天的な数学の天才児“ギフテッド"であり、周りは特別な教育を受けることを勧めるが、フランクは「メアリーを普通に育てる」という姉との約束を守っていた。しかし、天才児にはそれ相応の教育を望むフランクの母イブリンが現れ、フランクとメアリーの仲を裂く親権問題にまで発展していく――。

 

 姪っ子がものすごくこだわりがある子ですごく扱いづらい。そのこだわりの強さ(という名の自分の意志を貫くまで石になる頑固さ)が何かを成し遂げそうな原石に思えることもあるけど、私的には自分の意志を貫くより人の気持ちに寄り添ってやさしくなってほしい、普通の子でいいから。と思うのであった。

 

人は孤独な生き物

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  母親から受け継いだ数学の才能をもつメアリーは、母親の弟フランクと二人で生活していた。フランクは数学の助教授を辞め船の修理をして暮らしているため、メアリーの才能を熟知していたが特別な教育も家庭環境も与えていなかった。

 しかし、それは単純にお金の問題ではなくフランクには姉に託された意志があった。それはメアリーを普通の子供と同じように育てることだった。フランクはレベルが大きく違うことは分かっていてもメアリーを普通学校に通わせる。すると、そこから噂を聞きつけた母親がメアリーを迎えに来るのだった。

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 父親と息子を切り捨て、娘だけに期待を押しつけて生きてきた母親のイブリンは娘の自死後、彼女の娘であるメアリーを探し続けていた。

 フランクの語る姉とイブリンの語る娘は、全く別の望みを持っていた。フランクの元にメアリーを連れてやってきた姉は途方にくれていたが、イブリンが一緒にいた娘は数学の懸賞金がかかった問題に命を懸けていたとでもいうべき女性だった。

 

 フランクは母親から数学以外の何もかもを奪われ、数学以外に必要な試行錯誤をすべて取り払われた結果、メアリーが生まれたとき何をしたらいいのか自分で考えることができなくなってしまった姉を見て、生きていくために必要なのは偉業を成し遂げるだけの数学の才能よりも、自分で考えて周りの人と生きていくことだと考えていた。

 

 しかし、それはギフテッドに対する教育の放棄で犯罪だと息子フランクは母親のイブリンに裁判を起こされてしまう。メアリーの才能がメアリーの知らぬところで勝手に彼女の人生を決めようとしていた。

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 タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない

 

とは、チャンドラーの有名なセリフですが、

「プレイバック」の記事を読む。

どれだけ才能があろうとも、タフな肉体がなければ生存できず、タフな精神がなければ生き抜くことはできない。そして人にやさしくできなければ待っているのは孤独だけである。

 そのことを感覚的に分かっているからこそ、この言葉がたくさんの人の胸に響いて今でも名言として残っているのだと思います。

  才能や個性はもちろん素敵なものだけど、それに振り回されてしまうのなら、世の中にあるたくさんの"上手くいかないもの"と同じこと。

 あなたのため、と言いながら与えるのではなく奪っている人がいて、でもその人は奪う気なんて全然ないから話が全く噛みあわない。そういうことが割と普通にあるとそれが当たり前になって麻痺してくる。でも、それは確実に奪っていて奪われているのだ。