深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】新宿スワン~どんな仕事でも人対人であって、人対人の形をした道具じゃない。~

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≪内容≫

 親にもツキにも見放され、帰る電車賃もない白鳥龍彦(綾野剛)は、新宿にやって来る。チンピラたちに絡まれ大乱闘になったところを助けてくれた真虎(伊勢谷友介)にスカウトをやらないかと誘われる。それは幸せ請負人。いい女を探してクラブにホステスを紹介する仕事だ。「俺がスカウトした女の子には必ず幸せだって言わせます!」男と女の欲望が交差するこの街で、龍彦は一端のスカウトマンになることを誓う。この先に待ち受ける、過酷な試練を知らずに―。

 

Ⅱの記事はこちら↓

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こういう一期一会的な出会いによって開かれる人生って憧れるなぁ。余談ですが、初めて新宿歌舞伎町の飲み屋でオールしたときの若き日を思い出しましたw夜なのに街全体が明るくてそれを非日常と取るか偽物と取るかで好き嫌いがくっきり分かれる街だな、と思った。夜の新宿と渋谷は欲望の街だと思う。皆さ変なテンションなんだよね。「はーマジ男のいないカラオケなんか意味ないから」とか叫んでる女子集団がいたりナンパしまくってる男の人がいたり、もうとにかく肉食の街なんだよ、すごいところだよ本当に。

 

人は商売道具でなし

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  主人公の龍彦(綾野剛)は新宿歌舞伎町で真虎(伊勢谷友介)にスカウトマンのスカウトをされる。空っぽな龍彦は即OKしスカウトマンとして歌舞伎町をうろつく女性に声をかけていく。

 もちろんスカウトした後、彼女達に紹介するのはキャバクラや風俗、ヘルスと水商売であり、何も知らずに快諾した龍彦は胸を痛める。しかし真虎は自分の価値観で人の幸せを決めつけるな、と龍彦に説く。

 欲を満たすのに必要なものがお金なら、それを稼ぐ道に導くのが我々の仕事なのだと。龍彦はならば幸せにするためのスカウトマンとして、自分が出会った女性は全て幸せにしようと心に決める。しかし、スカウトマン全員がそんな志な訳もなく、商売道具としてしか見ない心のないスカウトマン・秀吉(山田孝之)と対立する。

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  実は秀吉と龍彦は同じ中学校の出身だった。秀吉はある事件を起こし学校を去ったが龍彦のことを忘れてはいなかった。龍彦がスカウトされたバーストとライバル関係にあるハーレムのスカウトとして実力を発揮していたが、本作で巻き起こるバーストとハーレムの合併によりハシゴとしての役割を担う。

 というのも龍彦にとって秀吉は眼中にもなかったが、秀吉にとって龍彦は決して忘れることのできない人間であったし、二度と会いたくない古傷でもあったのだった。

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  秀吉の紹介によって悪徳な風俗で働かされていたアゲハ(沢尻エリカ)だったが、紹介でやってきた龍彦によって新たなお店を紹介される。(もちろん紹介予定だった女の子も他の店に行った)

 闇金の返済を店が肩代わりするシステムだったが、一日多い時で30人を相手にしなければならない肉体労働にアゲハは悲鳴を上げる。そこで秀吉が持って来たのが覚醒剤であった。歌舞伎町で働く女性の間に回り始めたヤクの正体とその意味は秀吉と龍彦との因縁の対決へレールを敷き始めていた。

 

 龍彦の志がまっすぐに届いた女性は幸せになるけれど、やはり零れ落ちてしまう女性というのは居て、一人はビルから飛び降りて、一人は警察に捕まってしまう。

 龍彦がどれだけ人を大切にしたくても、その人自身が自分を大切にできなかったらどうしようもできないというリアルが本作にはありました。

 どんな仕事でも人対人であって、人対人の形をした道具じゃない。それが分かる人はきっとどんな場所でも生きていけると思います。

新宿スワン

新宿スワン

 

  欲望を飼いならすか、喰われるか、得体の知れない闇の街・新宿歌舞伎町。でもね、人の欲望に触れることの怖さ、全くの他人が吐き出している感情が自分にどれだけの影響を与えるかってことを客観的に学ぶには絶好の場所だと思う。自己責任だけど・・・。