≪内容≫
ビル・ナイ主演によるミステリーサスペンス。ロンドンで連続猟奇殺人事件が起こる。容疑者として4人の名前が挙がるが、ひとりは既に別の事件で死亡していた。事件を追う刑事・キルデアは、この容疑者のひとりを殺害したという女の裁判に出向くが…。
こういう話すごい好きなんですが、出会えることが少ないんですよね。中々amazonのAIでも引き当ててくれない・・・。イギリスは紳士の国と言いますが、戦争の発端作ったり結構エグイ事件があったりするのになぜかオシャレなイメージが残るのはなんなんでしょう?すごく興味があるイギリス・・・。
人殺しとサイコパス
物語は二つの事件が同時に絡み合っていた。
夫に毒を盛り殺した容疑をかけられているリジーだったが、実はその夫は今ロンドンを賑わせている連続殺人犯ゴーレムの疑いがあった。もしも夫がゴーレムならリジーは自分の身を守るための正当防衛という理由がつき終身刑を免れることができる。担当判事・キルデアはゴーレム事件を担当しておりリジーの服毒殺害には関与していなかったが、リジーの半生を聞いていく内に哀れな女性を何としてでも救いたいと強く思うようになる。
リジーは未婚の母の元に生まれたため、幼いときから裁縫の仕事をさせられていた。それだけでなく海の男たちに届ける配達も。厳粛な母と、野蛮な男たちが求める少女は正反対で、リジーは裁縫の報酬をもらうために男に触られ、そのことで母に折檻を受けて育った。リジーは幼いころからの夢である女優になり、男になりすまし下ネタで受けを取るが心の中と身体は男を拒否したまま成長した。
しかし、美しく若い女優に男は黙っていない。性的な欲望をつきつけられることは序ノ口で、演技をしたいと思っても脚本を書くのは男なのだ。氷ではなく石に刻まれるような名前を目指すリジーは劇作家の夫と結婚し、役をもらう約束をもらうが、リジーを愛して結婚した夫とは異なりリジーは性生活は一貫して拒否を貫いた。
野心あふれるリジーを拾い面倒を見ていた師・ダンは彼女に忠告する。出会ったときのような演劇を愛する無垢なリジーを知っているからこそだった。
しかしダンもまた男であった。
リジーを助けようと紛争する刑事・キルデアも、劇作家も、とにかく力があるものは男しかいない時代だった。虐げられ性を求められ続けたリジーの心は全く別の思考回路を組立て始める・・・。
有名なサイコパス診断で「お葬式」があります。私がこれを友達から聞いたのは高校生の時ですが答えを聞いたときはたまげました。まさに、こんな考え方があるなんて、と。
本作はそのとき感じた考え方と似ています。結局リジーの野望は果たされるわけですが、本当にダンの言うとおり「自力でやるしかない」というのが健全なやり方なので悲しいですね。この時代、ダンが正しくても自力の可能性は男性にしか開いていないとリジーが思っていたんだとしたらその考えは至極当たり前だったように思いますし・・・。
やり方は違えど、根本はギャッツビーにも似てるかな、と思います。不遇な生まれがどこまでもついてくる時代に夢を叶えたいと思ったら正しくは生きられなかったのかもしれません。
夢も叶えて正しく生きるってこう考えるとめちゃくちゃハードル高いですよね。そりゃあ諦めちゃった方が楽だ・・・。