深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

叶えられた祈り/カポーティ~叶えられた祈りには責任が伴う~

《内容》 ハイソサエティの退廃的な生活。それをニヒルに眺めながらも、そんな世界にあこがれている作家志望の男娼。この青年こそ著者自身の分身である。また実在人物の内輪話も数多く描かれていたので、社交界の人々を激怒させた。自ら最高傑作と称しながら…

【映画】解夏~僕らの修行は生まれた瞬間から始まっている~

《内容》 東京で小学校の教師をしていた隆之(大沢たかお)は、視力を徐々に失っていく病に冒され、職を辞し、母・聡子(富司純子)が住む故郷の長崎に帰った。懐かしい町を目に焼き付けようと日々歩く隆之のもとに、東京に残した恋人の陽子(石田ゆり子)がやって…

【映画】スキャナーズ~超能力者たちのえげつない闘い~

《内容》 超能力者(スキャナー)を使って警護を行う警備会社コンセックに組み込まれた主人公ベイル。科学者の手によってその能力をさらに開発された彼に与えられた任務は、恐るべき力で世界を支配しようとする裏のスキャナー、レボックの追跡だった。かくして…

【映画】ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密~どんな窮地に陥っても善良さと自分のルールを忘れるな~

《内容》 NY郊外の館で、巨大な出版社の創設者ハーラン・スロンビーが85歳の誕生日パーティーの翌朝、遺体で発見される。名探偵ブノワ・ブランは、匿名の人物からこの事件の調査依頼を受けることになる。パーティーに参加していた資産家の家族や看護師、家政…

【映画】ちょっと思い出しただけ〜きっとみんな忘れられない恋の思い出を秘めながら生きている〜

《内容》 “ある1日"で遡る、ふたりの6年間―第34回東京国際映画祭 観客賞/スペシャルメンションW受賞なんでもない、だけど 二度と戻れない愛おしい日々を、“ちょっと思い出しただけ"松居大悟監督初の完全オリジナルラブストーリー■第34回東京国際映画祭 観客…

【映画】点~髪に込められた儀式と禊、元恋人という点を通して過去へ帰る~

《内容》 田舎町で床屋を営む理容師の高志(山田孝之)。夏のある日、幼馴染で高校時代の恋人・ともえ(中村ゆり)がやって来る。14年ぶりに再会した二人。あの頃と今が交錯して、会話はどこかぎこちない。「結婚式のためにうなじの毛を剃って」とお願いする…

暇と退屈の倫理学/國分功一郎~生きることはバラで飾られねばならないが飾るためにはコツがいる~

《内容》 暇とは何か。人間はいつから退屈しているのだろうか。答えに辿り着けない人生の問いと対峙するとき、哲学は大きな助けとなる。著者の導きでスピノザ、ルソー、ニーチェ、ハイデッガーなど先人たちの叡智を読み解けば、知の樹海で思索する喜びを発見…

猫を棄てる 父親について語るとき/村上春樹~文化的雪かきは親子の歴史から始まる~

《内容》 時が忘れさせるものがあり、そして時が呼び起こすものがある。ある夏の日、僕は父親と一緒に猫を海岸に棄てに行った。歴史は過去のものではない。このことはいつか書かなくてはと、長いあいだ思っていた。―村上文学のあるルーツ。 なんという私的な…

我々は、みな孤独である/貴志 祐介~私を殺した人を見つけてくれますか?~

《内容》 探偵・茶畑徹朗の許にもたらされた、奇妙な依頼。「前世で自分を殺した犯人を捜してほしい」と言う依頼人・正木栄之介は八十歳に近いが、一代で企業を築き上げた傑物らしく未だ矍鑠としている。前世など存在しないと考える茶畑と助手の毬子は適当に…

夜の樹/カポーティ~彼女は私の壊れたイメージの総体であり、彼女を殺すのは私なのだった~

《内容》 ニューヨークのマンションで、ありふれた毎日を送る未亡人は、静かに雪の降りしきる夜、〈ミリアム〉と名乗る美しい少女と出会った…。ふとしたことから全てを失ってゆく都市生活者の孤独を捉えた「ミリアム」。旅行中に奇妙な夫婦と知り合った女子…