深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】手紙~パフォーマンスとしての償いから本当の罪を自覚し向き合うまで~

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≪内容≫

 弟の大学の学費のために盗みに入った邸宅で、誤って女性を殺してしまった剛志。千葉の刑務所に服役中の彼の唯一の支えが弟の直貴から来る手紙。しかし、兄が受刑者というだけで、差別され、仕事も転々とし、恋人にもふられ、夢さえ打ち砕かれてきた直貴。兄を思いながらも、その存在の大きさ、罪の大きさに彼は押しつぶされそうになる。そんな彼が所帯を持った。守らなければならない妻、子どものために、直貴はある決心をした。

 

第一次白夜行ブームに乗って姉が大量に東野圭吾シリーズを買ってきたので、ほとんどが知ってるか一回観たことがあるのだけど、大人になってから見るとだいぶ感動する。

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

  • 作者:東野圭吾
  • 発売日: 2020/04/24
  • メディア: Kindle版
 

 東野さんのお話って私の中で淡々と描かれている部類なので、あんまり感情が発達していない時期に読んでも「ああ・・・そういうことがあったんだね」で終わっちゃってました。だから今見ると泣けて泣けてしょうがない。

 

償うことの重み

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  兄弟二人で暮らしてきた武島家の長男・剛志は肉体労働で弟の大学費用を稼いでいたが、過度な労働により腰を壊してしまった。しかし学がないことで苦労をしたと感じている剛志は何とかして弟・直貴を大学まで行かせようと決心し資産家の家に不法侵入し金を盗んだ。しかしそのときその家に住むお婆さんが帰ってきてしまい鉢合わせとなった剛志はもみ合ううちにお婆さんが手にしていた鋏でお婆さんを殺してしまう。

 

 兄は強盗殺人で無期懲役と判決を受け、天涯孤独となっただけでなく、犯罪者の弟として残りの人生を生きることとなった直貴は、まず大学を諦めた。そしてお笑いの道に進み、恋人もできるが、賽の河原の石積みのように、積み重ねてもすぐに「犯罪者の弟」という事実に壊されてしまうのだった。

 直貴は次第に自分のために強盗を働いた兄との手紙交換を疎ましく思うようになっていった。

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  犯罪者の弟という石から逃れるようにやってきた電気屋で働いていると、そこの社長の平野が直貴の元にやってきた。そして、君の異動は正しい、差別は当然なのだと直貴に告げる。直貴は今までのことは全て自分の兄とはいえ自分個人としては関係のない部分でのいわれのない差別行為だと思っていた。しかし平野はこう告げる。

 

君のお兄さんはね

それまで考えなきゃいかんのだよ
自分が刑務所に入れば済むという問題じゃない
今の君の苦しみをひっくるめて
君のお兄さんの犯した罪なんだ

 

  平野がやってきたのはとある人物から平野宛に直貴を助けてやってほしいと懇願する手紙が届いたからだった。差別のない場所は探すのではなく、この手紙の主と繋いだ縁の様に何本も作っていけばいいと直貴に告げるのだった。

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  剛志は刑務所の中で直貴の手紙だけを待っていた。そして被害者遺族に向けてもずっと手紙を書き続けていた。

 しかしその手紙にどれだけ反省の言葉が書かれていようが弟への労りや心配が書き連ねてあろうが、"犯罪者"である人間からの手紙と自分の母親を殺した"殺人犯"から送られる手紙は、常に送られた側にとって"犯罪者に近しい人間"と"母を殺された被害者"という立場を突きつけてくるものであり、一生その犯罪を意識するにもしないにも関わらず忘れさせてはくれないのだ。

 

 もちろん剛志は今以上に二人を苦しめ、事件を風化させないために手紙を書き続けていたわけではないが、刑務所の中で罪と向き合うということに弟と被害者遺族を付き合わせているとも言えるだろう。

 

 一方で直貴は手紙を理由に剛志から距離を置いていた。今までの自分が受けてきた差別や苦しみを打ち明けられなかったのは剛志の犯した罪が自分のためだということに罪悪感を感じていたからだろう。しかし「兄がこんなことをしなければ」という思いもぬぐい去れない直貴は心で繋がる勇気がないから手紙を打ちきれなかったのだ。

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  しかし自分の子供までもが「人殺しの子供」と差別されいじめられている現実に直貴は一つの決心をする。それは剛志の犯した罪を誰にも言わずに胸の内に秘める決意だった。誰と共有することのできない秘密を自分の胸の中に置くことはとてつもなく怖いことでしょう。しかしそのことで何の罪もない妻と娘を守れるならばと直貴は手紙を打ち切ると兄に伝える。

 世間に見える繋がりではなく、血の繋がり、目には見えない繋がりを自分で持ち続けると決めたからこそできたことであった。

 

 恐らく兄は兄で「弟の学費のために仕方なくやった兄弟想いの犯行」というどこか自分を誇るような、殺してしまったことはすごく反省しているけれど仕方無かったのだと開き直るような心があったのではないかな。

 最後のシーンは直貴の手紙でやっと自分の犯した罪に向き合うことを始めたからこそ芽生えた羞恥心で顔を上げれなかったのかな、と思います。

手紙

手紙

 

辛いけど誰だって犯罪からは遠い場所にいたいよね。

 

東野圭吾シリーズ↓

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