深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】誰も知らない~幼少期にお母さんを嫌いになるのは難しい。~

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≪内容≫

母子家庭の4人の子供たち。それぞれ別々の父親を持つ子供たちは、学校に通ったこともなかったが、それなりに幸せな毎日を過ごしていた。しかしある朝、20万円の現金を残して、母が失踪する。この日から、誰にも知られることのない4人の子供たちの生活が始まり…。枝裕和監督が実際に起きた「巣鴨子供置き去り事件」をモチーフに映画化した作品。出演は柳楽優弥、YOUほか。

 

 実際に起きた事件はこちら

巣鴨子供置き去り事件 - Wikipedia

  子供って本当にどうとでもなっちゃうんですよね。近くにいる大人によって変っちゃう。よくよく思い返せば是枝裕和監督ってこういうことずっと表現している気がする。

 

子供は無条件で弱い

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  母子家庭の子供たちはお母さんが大好きで、お母さんも子供が嫌いだったわけではない。ただ、子供たちの面倒を見るより恋愛したかっただけ。それに長男はしっかりしていたし、子供たちも言うことを聞くいい子だったからこんなことになっているなんて思いもしなかった・・・っていうのがこの映画から伝わってくる家庭図でした。

 

 子供って本当に無知なんですよね。

 当たり前だけど、大人から見たらやさしさじゃなくてただ無責任なだけの行動も、今を生きている子供たちにしてみれば未来のことよりも今この場で怒られない方が喜ばしいことなのだから。

 

 だからどれだけ母親が子供たちを野放しにしたって子供は母を責めないし嫌いにならないしずっと母の帰りを待ってる。世間がどれだけ母親失格だといっても被害者である子供にとって母親は失格者ではなく母親に違いないのだ。その世知辛さが非常に伝わってくる。

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  親やそれに変わる大人がいないだけで、まるで見えない人間みたいに誰にも気付かれない。こんなにボロボロの服で薄汚れた肌で大勢の人の中に立っているというのに。

 

 この映画は親や大人を責める映画でもなく、子供たちに涙する映画でもなく、ただ淡々と親が消えた子供たちがどうやって生活していくか、が描かれています。これって想像出来なくないですか?

 

 私はしようと思っても、どうしても「他の大人を頼る」という道になってしまいました。これは今大人になったからこそ辿りつける道で、当時を思い出して!と言われても、当時親がいない、もしくは親がいない時に頼れる近所の人がいない環境で育たなかったから分からないのですよ。

 孤立無援の状態がどういうものなのかって想像だけで辿り着くにはエベレスト級だと思うのですがどうでしょう?

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  お母さんを嫌いになるのは難しい。

 子供は無条件に母親を愛してしまう。だけど、無条件に愛されることを知らない母親だったら、無条件に愛してくる子供は意味不明で理解出来なくて恐怖の対象かもしれないですよね。誰だって、自分にないものを持っている人が更にそれを自分に向かって差し出してきたら怖いです。

 

 一人じゃどうしても怖いから誰かに頼りたくて、でも子供の面倒を見るってなったら同性じゃなくて異性と結婚という形を取って一緒になってもらうっていうのが、何となくスタンダードですよね。子供はもちろん絶対的に被害者ですが、20歳になったら自動的に所謂世間が求める"大人"になることが難しいように、子供を産んだら自動的に"母親"になれるわけじゃない。

 

 答えがあるもの、考えれば見つけ出せるもの、白黒はっきりつけられるものがなんであるのかってそうした方が人間にとって楽だしすっきりするからだと思うのです。答えのないものをずっと考え続けるのって気持ち悪いでしょう?

 でも、世の中ってこういうケースバイケースでカテゴライズできない問題、答えのない永遠の課題みたいなものが結構あるんだと思います。

誰も知らない

誰も知らない

 

  それでそのことを考える人間っていうのは、やっぱり気付いた人なのだと思います。気付いただけでも苦しいのに、更に深く潜るのはかなりキツイことだと思います。でも考えられる、っていうことはそれだけ余裕があることの裏返しだと思うのです。だから「で、どうすればいいの?」って質問に答えるためでもなく、答えられない問題でありずっと考え続けるものだと思ってたくさんの人の胸で生き続けたらいいな、と思うのでありました。