深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】絞殺~怒りは他人の心に火をつける~

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《内容》

十七歳の少年が父に向かって「きたない」と罵り、暴力をふるいはじめた。少年は成績優秀で、大学入試の準備をしている最中に突然変異をみせた。生命の危険にさらされた父は、妻と相談して少年を絞殺した。しかし妻は、夫に向かって「わたしの勉をかえせ」と言い出した…。実際の事件をベースに、閉鎖された世界における人間関係の崩壊を新藤兼人監督が描いた問題作。西村晃、乙羽信子、狩場勉ほか出演。

 

 愛とか語るの恥ずかしいけど、愛をバカにしたり、見下すとそれ以上のお返しがやってくる。こういう時代ものってどうしても今の感覚で見ることしかできないけど、なんとなく今の人は無関心、と言われるのがちょっとわかった気になりました。

 

人は誰かのためにこそ怒る生き物

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  自分のために怒るなら我慢してたほうが楽だから。いっそあきらめてしまったほうが楽だから。他人に理解してもらうのも、他人と分かり合うために言葉を交わすのも。我慢してれば傷はつかないし、相手も傷つかない。実に効率的である。

 

 だが、他人のことになると人が変わったかのように猛烈に怒りだす。コメントやSNSでなぜ他人事でそこまで怒るのか?と思うくらいに激高するのである。

 

 人は自分の怒りでは燃えない。だけど誰にでも火種は確実になって、そこに火をつけるのは他人なのだ。

 

 さて、本作は少女の告白から始まる。

 主人公・勉は思いを寄せる初子が自宅で不埒なことをしているのを目撃する。その翌日、初子から電話があり蓼科に呼び寄せられる。

 行ってみるとホテルに初子一人で泊っているというではないか。なぜ学生の身でこんなことができるのか尋ねると、彼女は、今までずっと義父から性的暴力を受け続けていたこと、義父を殺したこと、そのお金で泊っていることを告白した。

 

 勉は、大人への怒りを抱え一人で帰宅するが、翌日初子が自殺したことがニュースになり、さらに義父を殺害したことに対して両親が初子を非難していたこともありどんどん大人への疑心を募らせていった。

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 自分の父親と母親の年齢が離れていること、子供には命令するばかりだが自分は毎晩母親と情事にふけっていることなどから、勉の父親への怒りはエスカレートしていき、家庭内暴力を繰り返すようになった。

 自分たちの手で止められなくなった両親は相談し、父親が息子を絞殺し物語は幕を閉じる。

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  初子が強姦され続けていたことが原因なのか、勉は自分の母親も無理に父親の妻になったのではないかと感じる。

 作中では、父親が母親に手をあげたりということはなかったが、同じ屋根の下で暮らす息子からすると何か思うことがあったのかもしれない。

 

 大人になるとよくわかるが、人間は自分ができていないことも当然のような顔をして命令したり指示してきたりするものである。

 まあ全員が全員同じことができて同じことができなかったら社会が回らないので、できることできないことを冷静に見極めてできる人間に話すのはわかるのだが、理屈では納得できないことも多々ある。

絞殺

絞殺

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

  父と母。母と息子。息子と父。もし子供がもう一人いたら何か変わっていたのだろうか。。