深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】わたしたち~クズに好かれる自分を好きでいられる?~

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《内容》

人生で初めて経験するいじめに戸惑い、葛藤する子どもたちの成長物語。いつもひとりぼっちの少女・ソンは、転校生のジアと友情を築いていく。だが、新学期になるとジアはソンを仲間外れにするボラと親しくなり…。

 

 映画の内容は多かれ少なかれ誰もが体験したことがある光景だと思う。いじめっこ、いじめられっこ、傍観者。大人になるまでに誰もがどれかしらの役をやったと思う。

 そしてその光景は子供の世界にだけ生まれるものではない。残念ながら大人になってもたびたび遭遇するものだ。

 

 もし私たちがこれらの役割を今も担っているのなら主人公のソンを見習って「NO」と言うべきだ。世の中で大切なことは地位や名誉ではない。どうやって生きていくか、だからだ。

 

クズに好かれる自分を好きでいられる?

 最初に言っておく。主人公のソンは超大人だ。この年(小学生)でこんな対応ができる子が世の中にどれくらいいるだろう?少なくとも私にはできなかった。私にできたのはいじめっ子にもたてつかず、いじめられていた子とも話すことくらいだった。その当時の私には美学とか信念とか、そういう自分の”核”みたいなものが何もなかった。

 振り返ってみても、当時の私は小学生のコロコロ変わる話題についていくのが私みたいなもので、自分というのは全くなかった。それは一つのことを意味している。自分が全くないということは”誰のことも好きでなかった”ということだった。

 

 主人公のソンは、クラスのリーダー的存在の女子・ボラにハブられている。突然始まったいじめにソンは理解ができない。ただ自分が受け入れられていないということと不穏な空気を感じ取り委縮するだけだった。

 

 新学期、ソンのクラスに転入生がやってくる。一人教室の掃除をしていたソンは学校の下見にきていたジアと最初に知りあい、友達になる。

 

 教室で一人ぼっちだったソンは春休みの間ほぼ毎日ジアと一緒に遊んだ。お金がないソンと違い裕福な家の子のジアは、ソンがもっていない携帯も持っていたし、遊ぶお金も持っていた。だけどジアが一緒に暮らしているのはおばあちゃんで、両親と一緒には暮していなかった。

 

私に近寄ったでしょ
いじめられっ子が

 

いじめられっ子は1人で遊びな
友達に嫌われるだけだよ

 

いじめられっ子のくせに

 

 ソンをいじめているボアは実はジアと同じ塾に通っていて塾友だった。新学期までジアはソンとボアの関係を知らなかったが、同じクラスになり状況を把握するとボアと一緒にソンをいじめ始めたのだった。

 

 我慢していたソンだったが、家族の悪口を言われジアにキレる。ジアはソンに「いじめられっ子のくせになんで私に近づいたの」とキレる。そう吐き捨てて足早に教室にもどったジアにソンはの祖母から聞いた話を言う。「あんただって一緒でしょ?あんたも前の学校でいじめられてたいじめられっ子じゃん」と。

 

じゃあいつ遊ぶ?
ヨノが叩いて僕が叩いたら
いつ遊ぶの?

 

 ソンは忙しい両親に変わって弟の世話をしていた。優しい母親だったが家計を苦しく、ソンは携帯を持つこともできなかった。クラスの話題にもついていけない、弟の面倒も見ないといけない、クラスではいじめられてる、成績も下がる。さらに弟は乱暴者のヨノにいつも怪我をさせられているのにやられっぱなしでヘラヘラしてる。

 

 「やられたらやり返す」処世術を感じ始めていたソンに弟はそうやってやったらやり返すってしてたら遊ぶ時間が無くなっちゃう。僕は喧嘩がしたいんじゃない。ヨノと遊びたいんだ。と幼い声でソンに言うのだ。

 

 この映画において、クズはいじめっ子のボアだ。世の中声が大きく態度がでかいやつがすべてクズではないけれど、クズでかつ声が大きく態度がでかいやつがいたらそいつはただのクズじゃない。影響力のあるクズだ。

 人はそいつにひれ伏す。そんなクズに「お前のことは友達だから、あんたのことは大好きだから」と言われたらそれは自分の安全とイコールに感じるだろう。

 

 でも果たしてクズに好かれる自分を好きでいられるだろうか?私は実生活でも映画でもクズがクズたる所以は「人を好きになれない」からであると思う。恋愛的な意味ではなく友愛の意味で。

 人を利用価値でしか判断できないクズが人を好きになることはない。クズのいう"好き"は"自分にとって都合がいい"と言うことに過ぎない。つまりクズに好かれたところでクズから「お前は俺にとって都合のいい人間だよな?(ニッコリ)」というだけのことだ。

 

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わたしたち(字幕版)

 クズでないなら傷つけたり傷けられたりしながら闘っていくしかないのだ。でも、私はそういう生き方が好きだ。クズに嫌われる自分が好きだ。