《内容》
全身を縛られたまま“餓死”させられる不可解な連続殺人事件が発生。捜査線上に浮かび上がったのは、過去に起こした事件で服役し出所したばかりの利根という男。刑事の笘篠は利根を追い詰めていくが、決定的な確証がつかめないまま第三の事件が起きようとしていた―。なぜ、無残な殺し方をしたのか?利根の過去に何があったのか?さまざまな想いが交錯する中、やがて事件の裏に隠された切なくも衝撃の真実が明らかになっていく―。
むっちゃ泣いた。
本作の原作読みたくなりました。なんて言ったらいいのか、とにかく辛すぎる。
生活保護の申請者に自己責任を問うこと
護られなかった人たちへ
どうか声を上げてください
心を閉ざしていると
自分がこの世に一人ぼっちでいるような気になります
でもそれは間違いです
この世は思うより広く
あなたのことを気にかけてくれる人が存在します
(中略)
もう一度、いや何度でも勇気を持って、声をあげてください。
不埒な者があげる声よりも、
もっと大きく。
もっと図太く。
舞台は東日本大震災発生から9年後の宮城県。生活保護担当の三雲所長がとあるアパートで餓死した状態で発見された。その後、宮城県議員の城之内も同じように餓死した状態で発見される。二人の被害者には共通点があり、過去、塩釜福祉事務所で2年間一緒に働いていた。
被害者は二人とも"善人"で、人から恨まれるようなことはないと周囲は口を揃えるが、警察は怨恨の線で捜査を開始。塩釜での聞き込みでは、二人が生活保護申請者に対し受給させなかったという話が出て来た。
場面は東日本大震災直後の3人の姿に切り替わる。
身寄りをなくし一人きりで避難所の片隅に座る女の子。冷たい目をしながら離れた場所で一人で座る男の子。そんな二人に話しかける老婆の3人。避難所に待機している家族を見るのが辛い女の子は、男の子をある場所へ誘う。それは避難解除が出ていない家に戻っている老婆の家だった。
その夜、生き残ったことへの罪悪感やいなくなってしまった母親への最後の言葉に苦しむ子供たちを老婆は抱き締める。震災によって凍りついた心が3人であったことで少しずつ溶けだした夜だった。
老婆の名前は遠島 けい。被害者二人が隠蔽した生活保護申請者の一人。男の子の名前は利根 勝久。過去、塩釜福祉事務所に火をつけた男だった。
だから避難所で黄色いパーカー着たカンちゃん見た時
カンちゃんだけは何とか護らなきゃって
絶対見捨てちゃダメだって
震災は怪物
あたしたちが立ち向かうこともできない
突然来て全部壊してたくさんの命を奪って
母さん・・・
誰憎んでいいのか分からなかった
だけどケイさんが死んだのは違う
人間のせい
震災によって母を奪われ、震災によって出会ったケイさんを人間によって奪われた。二度も大切な人を奪われた悲しみ。死んだら終わりだという生活保護担当。生活保護が受けられなければ餓死することは分かっていたのに真摯に対応しなかったのに、死んだら終わりなんてことにはさせない。
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残された者が意志を受け継ぐように、憎しみや悲しみの連鎖もまた受け継がれていく。どんな世界でもどんな県でも統一されたものはない。一度声をあげて無視されても、他の場所では届くかもしれない。他の人なら聞いてくれるかもしれない。難しいことだけど諦めないこと、心を閉ざさないこと、それは忘れないようにしたい。