《内容》
自閉症の妹・真理子のたびたびの失踪を心配し、探し回る兄の良夫。やっと帰ってきた妹だが、町の男に体を許し金銭を受け取っていたことを知り、妹をしかりつける。しかし、罪の意識を持ちつつも互いの生活のため妹へ売春の斡旋をし始める兄。このような生活を続ける中、今まで理解のしようもなかった妹の本当の喜びや悲しみに触れ、戸惑う日々を送る。そんな時、妹の心と身体にも変化が起き始めていた…。
毛色でいうとこれに似てる。
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鬼滅の刃の堕姫・妓夫太郎の回もそうかな。
遊郭編。誰も助けてくれなかった兄弟二人が必死に生きてきた話。
俺から取り立てるな
何も与えなかったくせに取り立てやがるのか
許さねえ!!
許さねえ!!
悪いことは人を苦しめる
人は誰もが正しく生きようとする。
なぜか?悪に生きれば刑務所に入れられるから?怖いから?でも、どうして刑務所に入ったわけでもないのに恐怖がわかるのだろう?
そもそも何が正しいのか、なぜ正しさという基準が生まれたのか、それは多くの人の直感というか集合的無意識というべきか、とにかく我々は正しさの匂いを知っていて、危険な香りも知っているのだ。
そしてなるべく危険な香りのする場所には行かないようにする。そして他人が行こうとしても止めようとする。
根拠も経験もないけど、それが苦しいことだというのをなぜか知っているからだ。
生まれつき足の悪い兄は、仕事をクビになってしまう。母が亡くなり一人で自閉症の妹を養わなければならなくなった兄だが、仕事と妹の面倒の両立は厳しく、いつも忙しなくすぎていく日常では、国の制度や情報などにも追いつけていないように見えた。
あるときまた妹が家からいなくなった。
知り合いや警察にお願いして見つかったけど、妹はどうやら知らない男とどこかにいってお金をもらってきたらしい。
それが悪いことだと叱りつける兄だったが、貧困により、ゴミを漁って何かのソースをすすり、やっと見つけたピザはホームレスに奪い取られ、ついには電気まで止まってしまった現実に、兄はいつかの妹がもってきた一万円を思い出すのだった。
人目を避けるように窓中に貼っていた段ボールを取り払って太陽の日差しの中でマックに喰らいつく二人。
正しいことだけでは浴びれなかった光を二人は悪いことをして手に入れた。
それに気づいた友達が忠告しても「偽善者」だとしか思えなかった。だけど、そんな生活は妹の妊娠によって兄の目を覚まさせることとなったのだ。
意思の疎通が難しく、何を思っているのかわからない妹だったが、たくさんの客の中でも、帰りたくない客がいたり、それが悪いことでも仕事をしたがったり、なんとなく妹の感情が分かるようになっていった。
妹と相思相愛だと思った客に結婚を断られ、中絶手術にサインした兄は、仕事も復帰することになりもうこういう仕事は終わりだと思った。
だけど妹は違った。
いつの間にか自分で紅をさし頬を赤く染めることを覚えていた。
兄の声より、電話の着信音に反応するようになっていた。
取り戻せると思ってた日常は、もうとっくに戻れない場所になっていたのだ。
兄の友達が「お前何してるかわかってんのか?」と本気で怒って殴るシーンがあって、それに対して兄は「偽善者、そういうこというなら金くれよ」というんですが、こういうときの正しい答えってないですよね。
だって、それで正しいことして二人が餓死しても、死んだ後に行政がどうだとか言うだけで生き返らないんだから。
だけど、一つ分かったのは、悪いことは悪いという自覚がないとダメなんだということ。
妹が、なんだかんだ客の様子を見たり兄の様子を気にしてるように感じて、だからこそ自分が誰かの役に立てるのが嬉しいのかな、単にご飯が食べれるとかじゃなくてそういう純粋な感情があるのかなとか思ったりしたら、余計に悲しいラストだった。