《内容》
金魚屋の息子復一は真佐子に恋をするが、真佐子は他の男性と結婚してしまう。恋しいあまり復一は彼女のような美しい金魚を作ろうと半狂乱になってゆく。
タイトルから華やかな雰囲気ムンムンです。青空文庫で一時間ほどで読めちゃいます。
意識すればするほど手に入らず、手放した先で手に入れる。ラストのタイトル回収はとても美しいです。
美は一つに在らず
だが珍らしく映画館の中などで会うと、復一は内心に敵意を押え切れないほど真佐子は美しくなっていた。型の整った切れ目のしっかりした下膨れの顔に、やや尻下りの大きい目が漆黒に煙っていた。両唇の角をちょっと上へ反らせるとひとを焦らすような唇が生き生きとついていた。胸から肩へ女になりかけの豊麗な肉付きが盛り上り手足は引締ってのびのびと伸びていた。
金魚家の跡取りである主人公・復一は崖邸の娘・真佐子の美しさに小さい頃から戸惑っていた。幼い時分には、わざと真佐子に意地の悪いことを言っていたが、中学生にもなると美しさに女性らしさも加わった真佐子と言葉をかわすには、自分を固く保つ必要があるほどだった。
復一は特別金魚に思い入れはなかったが、真佐子は金魚という存在を愛しており、復一に美しい金魚を造ってくれと言う。真佐子を思いながらその気持ちを一度もいうことができないまま、真佐子は結婚してしまう。
復一は真佐子よりも美しい金魚を造ろうとのめり込んでいくが、中々傑作は生まれなかった。ある日復一は失敗作を流した古池まで滑り落ちてしまう。誰も面倒を見ることもなかったその池の中で密かに生まれている命があったのだった。
「生意気なこと云うようだけれど、人間に一ばん自由に美しい生きものが造れるのは金魚じゃなくて」
真佐子は復一にはこのようなことを言って、一般の人とは違う人生を提示しておきながら、自分は普通の女だと言って結婚して子供を産み、ほとんどの女性と同じ人生を歩みました。
時代なんですかね。谷崎作品の女性だとこれだけ美しかったら超横暴になっているので真佐子の無性格には拍子抜けしてしまいました。
個人的には美人かどうかより、他人に託すのではなく自分で自分のやりたいことをやる人に美しさを感じるので、真佐子というキャラクターにはあまり惹かれませんでしたが、文章の美しさにはとても惹かれました。
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これめっちゃ美しそうだな。。。