深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】あんのこと〜生きていくために絶対必要なもの、それは「強い意志」に他ならない〜

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《内容》

香川杏、21歳。シャブ中でウリの常習犯。ホステスの母親と足の悪い祖母と、3人で暮らしている。子どもの頃から、酔った母親に殴られて育った。小4から不登校。初めて体を売ったのは12歳で相手は母親の紹介だった。希望はおろか絶望すら知らず、ただ繰り返される毎日。そんな薄暗闇の世界が、ある出会いをきっかけに少しずつ変わり始める。だが、やっと繋がった細い糸も突然のコロナ禍に断ち切られてしまい──。

 

環境に恵まれなくて、それでも生きていくために絶対必要なもの、それは「強い意志」に他ならない

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じゃあ強い意志ってどこから生まれるの?っていうと、それは個体差による気がしてしまう。

 

 

悪魔はいつもそこに

 主人公・香川杏の家庭環境は最悪だ。父親はいない。母親はアル中で杏を私物化している。ママにしたり子供にしたりして、都合よくすがったり殴ったり強要したり奪ったり、とにかく悪魔である。杏はそんな環境の中で薬物に依存するようになる。やめたくてもやめるきっかけが見つからない。その場所でただ日々を繰り返していた杏がついに捕まる時が来るのだが、それは地獄に向かうきっかけではなくて、日の元を歩くきっかけになるように見えた。

 

 刑事の多々羅は薬物中毒者のための更生施設にも顔を出し、杏の世話を焼く。小学校を途中でリタイアしたことを自己責任だと告げる役所の職員には怒鳴り込み、20日働いて5万円しか給料を渡さないブラックな会社にも怒鳴り込む。

 

 そうやって他者の介入で少しずつ社会との繋がりを持ち始めた杏だったが、居場所を知った母が職場に怒鳴り込みに来たり、シェルターにやってきたり、見知らぬ女が子供を置いていったり、コロナになって職を失ったり、信頼していた多々羅が実は更生施設の女性を脅していたり、立ち直ろうにも杏には多くの試練が立ちはだかってしまう。

 

 いつも繋がっていた多々羅への電話はもう通じない。あんは断ち切っていた薬物に再度手を出してしまう。

あんのこと

あんのこと

  • 河合優実
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 AにとってBは悪魔、でもCにとってBは神様。誰かを救って誰かから奪う。何が正しいとかそんなのなくて、確かなのは生きていることだけ。