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書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】ゴーン・ガール~愛が憎しみになったり憎しみが愛になったりを繰り返すのが結婚生活?~

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≪内容≫

結婚5周年の記念日。誰もがうらやむような幸せな結婚生活をおくっていたニックとエイミーの夫婦の日常が破綻する。エイミーが突然姿を消したのだ。部屋は荒らされ、キッチンに残されたエイミーの大量の血痕から警察は他殺と失踪の両方の可能性を探る。憔悴した表情で行方のわからなくなった妻を心配する夫ニック、だが彼にも捜査の手が及び窮地に立たされる。妻エイミーに何が起きたのか――。

 

名曲はイントロで決まるという格言もあるし、名作は書き出しで分かるという話も聞くが、この映画の冒頭の語りはまさしく名作だと思う。私が一瞬で心を奪われた書き出しは本作以外は「ロリータ」である。

「ロリータ」の記事を読む。

さて、「ゴーン・ガール」の冒頭の語りを引用して紹介するのでぜひ気になった人は本作を見てほしい。

 

妻のことを考えるとき
いつもその頭を思う
愛らしい頭蓋骨を開いて
頭脳を解きほぐし答えを知りたい

 

結婚の基本的な問い
"何を考えてる?"
"どう感じてる?"
"僕たちは どうしたんだ?"

 

 ここからめちゃめちゃネタバレしますが、これはネタバレするとジェットコースターが滑り台レベルに失速するので要注意です。ちなみに下記記事に似たような映画をまとめているので、読んでみて好きそうだ!もしくは好きな作品が入ってる!と思った人は映画を見てからまた来てください(願)

www.xxxkazarea.com

 

 

結婚は人を変える?

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結婚後の問題って多かれ少なかれあると思いますし、結婚だけじゃなく付き合って何年か経つと自分がときめいた相手はどこにいったんだろう?と目の前の恋人を見て思ったりするのは割と普通の出来事なのだと私は思います。

 

おそらく、こういった諦め?的な感情は私だけでなくアジア圏だと慣れ親しんだ感情なのでは?と思うのは日韓の映画では夫がどんなにクズでも妻が愚かでもやり直していく過程が映画になることが多いからです。

対して、アメリカの後日談は痛烈です。

 「ブルーバレンタイン」の記事を読む。

ブルーバレンタインは情熱的な結婚をしたものの、本作とは違って「変わらない夫」に苛立ち離れようとする話ですが、どっちにしろ相手に求めすぎなのでは?と思うのが共通点です。

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さて本作は、児童文学作家でベストセラー作家の母親の元に生まれたエイミーが失踪したことから始まる。

ベストセラーとなった「完璧なエイミー」のモデルとなったエイミーは、ハーバード大卒のエリートだったが、自分のことを本の内容とはかけ離れた「欠点の多い現実のエイミー」と感じている。そんなエイミーの心の隙間を埋めたのがニックだった。

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いつも完璧なエイミーと比べられる人生。創られた物語のエイミーは常に優秀で自分とは大違い。だけど世間は完璧なエイミーのモデルとなったエイミーとしてしか自分を見ない。永遠に越えられない壁だった完璧なエイミーを壊してくれたのがニックだったのだ。

 

しかし二人はすれ違う。そしてニックは若い女性と浮気までしてしまうのだった。ニックと双子の妹・マーゴと共同経営のbarのオーナーはエイミーでもあり、ニックはお飾りの旦那という風にでも自分を思ったのかも知れない。年下の浮気相手はエイミーとは違って自分を頼り甘えてくれる、つまり自分を価値のある男だと思わせてくれたのだ。

かくしてエイミーは復讐に燃える。自分を殺したニックを殺してやるってね。

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突き飛ばされたことは怖くない
私を傷つけたいと願う彼が恐ろしい
そして夫に怯える自分の気持ちが何よりも恐ろしい

 

エイミーの回想ではニックは自分の甲斐性のなさをエイミーにぶつける嫌な夫だった。だからエイミーは色んな言葉で彼を罵り、今までの出来事も「演技だった」などと語るのだけど、おそらくこれは単純にニックが謝れば済む話だった。現に、テレビでニックが弁護士に「人に好かれるように味方になってもらうための話し方」の通りに話したらエイミーは帰って来たのだ。

この時点で、エイミーはサイコパスでもなんでもなく民衆と同じ心であることがわかる。そして民衆と違うのは誰よりニックを愛していることだった。

 

エイミーはニックに突き飛ばされたことで怯えてしまった。そしてそれを恐ろしく感じた。なぜか?一般的に考えれば人から暴力を受ければ怯えるし怖いと思うのは本能で恐ろしく思う対象ではない。ではなぜ恐ろしく感じたのかというと、ニックと一緒に生きて行きたいからだと思う。

相手を恐ろしく感じてしまえば終わりが来てしまう。だからその恐ろしさを越えるために自分自身を恐ろしい存在にしたのだ。

 

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あなたはクソ女と結婚した
クソ女に好かれようと装ってた自分が好きなはず

 

私はひるまない
クソ女だから

 

あなたのために殺した
私だからできたの

 

平凡な女で満足できる?
ムリよ
私でないと

 

ここでいう「平凡な女」とは浮気相手の女性のことで、エミリーはよく「あの巨乳の」と付け足していた。エミリーは貧乳ではないと思うのだけどたしかに巨乳ではない。だから巨乳を越える武器、それから今後ニックが浮気する可能性を考えて「平凡ではない」という異常にハードルが高い女へと進化した。

 

私からするとエイミーがニックのことを好きで好きで好きで好きで大好きなのに、ニックはどんどん自分に隠しことをして遠ざかって行ってしまうから、愛が憎しみに変わって、そこから一転、憎しみが愛に変わったんだなーというただそれだけ。

ゴーン・ガール (字幕版)

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ニックは自分の甲斐性のなさとかクビになったこととかで色々思うところがあったのかもしれないけど、元々金持ちのエイミーにとって一番欲しかったのは富ではなくて、「完璧なエイミー」という壁をぶち壊してくれるバーサーカーだったからどうでも良かったんじゃないかなぁ?と思います。ただ、こういったときに相手はどうするのか?という試される行為がニックにとっては最高に嫌だったかもしれないですが。

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エイミーがやり込められるのが世間的な悪人ってところもまた面白いなぁと思います。社会適合者の目はふしあな。