深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】哀愁しんでれら~シンデレラはその後王子様に洗脳されていくのでした~

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《内容》

児童相談所で働く小春は、自転車屋を営む実家で父と妹と祖父と4 人暮らし。母に捨てられた過去を抱えながらも、幸せでも不幸せでもない平凡な毎日を送っていました。しかしある夜、怒涛の不幸に襲われ一晩ですべてを失ってしまいます。そんな彼女に手を差し伸べたのが、8 歳の娘・ヒカリを男手ひとつで育てる開業医の大悟。優しく、裕福な大悟は、まさに王子様。「ただ幸せになりたい」と願う小春は、出会って間もない彼のプロポーズを受けいれ、不幸のどん底から一気に幸せの頂点へ駆け上がりました。
シンデレラの物語ならここで“めでたしめでたし"。
しかし小春の物語はそこでは終わりませんでした…

 

どこか「嫌われ松子の一生」を彷彿させる作品だと思った。

報われないところが・・・ね。

「嫌われ松子の一生」の記事を読む。

 

個人的に土屋太鳳さんは良い子ちゃんより狂気的な役の方がものすっごく魅力を感じるので、後半の壊れっぷりはかなり美しかった。

 

アンハッピーなシンデレラ

お互い子供時代に親への不満があったことから、子供の言うことを大事にしようという教育方針で合致する2人。

自分達の子供は純粋無垢であると疑わない2人は、わがまま放題の娘のやり方を屁理屈で擁護していく。

 

とんでも理論武装によって学校の放送を使ったりやりたい放題なモンスターペアレンツな2人だが、1人の同級生の死によって一家は窮地に追い込まれていくのであった。

 不幸のどん底から、開業医の妻という現代のシンデレラストーリーのヒロインとなった小春だが、物語は「めでたしめでたし・・・」で終わった童話のその先に切り込んでいく。

 

 主人公の土屋太鳳演じる小春は幼少期に母親に捨てられていた。小春は優しく困っている人を放っておけない性格であったが、それは「自分の母親のようになるものか」という感情が元にもなっていた。

 

 夫となった大悟その娘・ヒカリの生活に妻として母親として参加するうち、この親子の絆がおかしいと気付き、ヒカリの陰謀の元、大悟に家から追い出される。

 返る場所のない小春が泣きながら家を出て歩いていると追いかけてきて「捨てないで」とすがるヒカリ。その姿はあの日の自分と重なり、今の自分は母親と重なっていた。

 

「こうはなるまい」と思っていた未来に歩を進める運命なのか、2人の元壊れていく小春は「捨てられたあの時の自分」を守るため、それ以外の全てを傷つけていくのだった。

 もし、「捨てないで」ですがるヒカリとのワンシーンで小春が「もしかして母親もこんな風に追い詰められていたのだろうか?」と今の自分の視点でもう一度過去を見直すことができたら違う未来があったのだろうか・・・と思いました。

 

 おかしいと気付きながらも自分もおかしくならなければこの家族の一員として認められないという状況が小春をアンハッピーなシンデレラにしていく。

 

 シンデレラストーリーとかいって周りに羨ましがられる位置に立たされちゃうと、そこを捨てるのも難しいのかもしれない。それに真面目な人ほど「親と同じになりたくない」「自分がされて嫌だったことはしたくない」と自分を苦しめても相手に優しくしてしまう部分があるように思う。

 

 だけど、私はこう思う。

自分がされて嫌だったことを他人にしても良いんだよ

と。

 人間そんな完璧じゃないし、優しい人っていったっていつも常に優しくなんかできない。周りに優しくしてくれる人がいる間は優しい人でいれるだけ。

 まずは自分を守ること。自立すること。それがいつか他人を守ることになる。

 

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 何も考えずに見始めたら意外にホラー展開で思いがけない満足感を得られました。