深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

書評-ホラー・サスペンス

エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談~怖い童話の方が心に残る~

≪内容≫ 典型的な幽霊屋敷ものから、悪趣味ギリギリの犯罪もの、秘術を上手く料理したミステリまで、奇才ゴーリーによる選りすぐりの怪奇小説アンソロジー。古典的名作「猿の手」(W.W.ジェイコブズ)、「信号手」(C.ディケンズ)も収録。すべての作品に「何か」…

ボーン・コレクター/ジェフリー・ディーヴァー~生きる苦しみと苦しみながらも生きること~

≪内容≫ 連続殺人鬼ボーン・コレクターは被害者の周辺に、次の犯行現場と殺害手口を暗示する手掛かりを残しながら次々と凶悪な殺人を重ねてゆく。現場鑑識にあたるアメリア・サックス巡査は、ライムの目・耳・手・足となり犯人を追う。次に狙われるのは誰か?…

傷だらけのカミーユ/ピエール・ルメートル~誰かのためになにかを犠牲にできる、そういう誰かがあなたにはいますか?~

≪内容≫ 『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』のヴェルーヴェン警部シリーズ三部作の最終作。『その女アレックス』に続き、イギリス推理作家協会賞の2015年度インターナショナル・ダガー賞を受賞。 三部作の三部目となると、キャラクターや作品の雰囲気…

その女アレックス/ピエール・ルメートル~人々の手段として通過され続けたアレックス~

≪内容≫ おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受け…

悲しみのイレーヌ/ピエール・ルメートル~文学という歪んだ鏡に映るのはなに?~

≪内容≫ 『その女アレックス』のヴェルーヴェン警部のデビュー作。 奇怪な連続殺人をめぐる物語がたどりつく驚愕の真相。 「その女アレックス」の前作です。 奇怪な連続殺人をめぐる物語というより猟奇的な殺人という言葉が合うかなぁ。 もうとりあえず気持ち…

殺戮にいたる病/我孫子 武丸~焦る気持ちを抑えて丁寧に読むことをオススメします。~

≪内容≫ 永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえよう…

太陽の坐る場所/辻村深月~太陽面した女より手のひらを太陽にかざす女の方がよっぽど温かい~

≪内容≫ 高校卒業から十年。元同級生たちの話題は、人気女優となったキョウコのこと。クラス会に欠席を続ける彼女を呼び出そうと、それぞれの思惑を胸に画策する男女たちだが、一人また一人と連絡を絶ってゆく。あの頃の出来事が原因なのか…?教室内の悪意や痛…

私の消滅/中村文則~中村文則さんの作品を全て読んで思うこと~

≪内容≫ このページをめくれば、あなたはこれまでの人生の全てを失うかもしれない。不気味な文章で始まる手記―これを読む男を待ち受けるのは、狂気か救済か。 私は最初の「銃」~「最後の命」くらいまでの、主人公がひたすら自分の感情と向き合いウジウジしな…

迷宮/中村文則~自分の嫌なとこを消そうとすると、自分自身が消えちゃう~

≪内容≫ 胎児のように手足を丸め横たわる全裸の女。周囲には赤、白、黄、色鮮やかな無数の折鶴が螺旋を描く―。都内で発生した一家惨殺事件。現場は密室。唯一生き残った少女は、睡眠薬で昏睡状態だった。事件は迷宮入りし「折鶴事件」と呼ばれるようになる。…

悪と仮面のルール/中村文則~自分とうまく付き合っていこうね~

≪内容≫ 邪の家系を断ちきり、少女を守るために。少年は父の殺害を決意する。大人になった彼は、顔を変え、他人の身分を手に入れて、再び動き出す。すべては彼女の幸せだけを願って。同じ頃街ではテロ組織による連続殺人事件が発生していた。そして彼の前に過…

去年の冬、きみと別れ/中村文則~自分の欲望を持とう~

≪内容≫ ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は二人の女性を殺した罪で死刑判決を受けていた。だが、動機は不可解。事件の関係者も全員どこか歪んでいる。この異様さは何なのか? それは本当に殺人だったのか? 「僕」が真相に辿り着け…

王国/中村文則~木崎はきっと私たちだと思った~

≪内容≫ 組織によって選ばれた「社会的要人」の弱みを人工的に作ること、それがユリカの仕事だった。ある日、彼女は見知らぬ男から忠告を受ける。「あの男に関わらない方がいい…何というか、化物なんだ」男の名は木崎。不意に鳴り響く部屋の電話、受話器の中…

玩具修理者/小林泰三~クトゥルフ神話とか量子力学とか絶対面白いやつ~

≪内容≫ その人は、何でも治してくれる。壊れた人形、死んだ猫、そしてあなただって。生と死を操る奇妙な修理者が誘う幻想の世界を描き、日本ホラー小説大賞選考委員会で絶賛を浴びた表題作ほか、書き下ろし1編を加えた作品集。 面白かったー! ホラー小説な…

掏摸/中村文則~ほんとうの孤独~

≪内容≫ 東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎、かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」――運…

遮光/中村文則~優しさとか空気を読むとか、そういうのって窮極的には嘘ばかり口にすることだと思う~

≪内容≫ 恋人の美紀の事故死を周囲に隠しながら、彼女は今でも生きていると、その幸福を語り続ける男。彼の手元には、黒いビニールに包まれた謎の瓶があった―。それは純愛か、狂気か。喪失感と行き場のない怒りに覆われた青春を、悲しみに抵抗する「虚言癖」…

銃/火/中村文則~だって火は自分で勝手に燃え広がっていくから~

≪内容≫ 雨が降りしきる河原で大学生の西川が出会った動かなくなっていた男、その傍らに落ちていた黒い物体。圧倒的な美しさと存在感を持つ「銃」に魅せられた彼はやがて、「私はいつか拳銃を撃つ」という確信を持つようになるのだが…。TVで流れる事件のニュ…

MORSEモールス/ぼくのエリ~LET THE RIGHT ONE IN正しき者を受け入れよ~

≪内容≫ 母親と二人暮らしのオスカルは、学校では同級生からいじめられ、親しい友達もいない12歳の孤独な少年。ある日、隣のエリという名の美しい少女が引っ越してきて、二人は次第に友情を育んでいく。が、彼女には奇妙なところがあった。部屋に閉じこもって…

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ/本谷有希子~ギャグとホラーは紙一重~

≪内容≫ 「お姉ちゃんは最高におもしろいよ」と叫んで14歳の妹がしでかした恐怖の事件。妹を信じてはいけないし許してもいけない。人の心は死にたくなるほど切なくて、殺したくなるほど憎憎しい。三島由紀夫賞最終候補作品として議論沸騰、魂を震撼させたあの…

悪の教典/貴志祐介~I'm my teacher's pet~

≪内容≫ 晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。学校という性善説に基づくシステムに、サイコパスが紛れこ…

メアリー・スーを殺して/乙一~山羊座の友人が読みたくて~

≪内容≫ 「もうわすれたの? きみが私を殺したんじゃないか」(「メアリー・スーを殺して」より)合わせて全七編の夢幻の世界を、安達寛高氏が全作解説。書下ろしを含む、すべて単行本未収録作品。夢の異空間へと誘う、異色アンソロジー。 山羊座の友人のコミッ…

盲目的な恋と友情/辻村深月~女の美醜は女が決める~

≪内容≫ これが、私の、復讐。私を見下したすべての男と、そして女への――。一人の美しい大学生の女と、その恋人の指揮者の男。そして彼女の親友の女。彼らは親密になるほどに、肥大した自意識に縛られ、嫉妬に狂わされていく。そう、女の美醜は女が決めるから…

屍鬼/小野不由美~カインとアベル~

≪内容≫ 人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躙したかのように散乱していた――。闇夜をついて越して…