深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

書評

お供え/吉田 知子~知らない間に人間ではない何かになっていた~

≪内容≫ 家の前に供えられる花、庭に投げ込まれるお金。知らぬ間に神様に祀り上げられてしまった未亡人を絶妙な筆致で描く、川端賞受賞の表題作ほか6篇を収録。 これはけっこう怖いです。 川端康成はまだ、恋愛とか品のある男女が出てきてたのでそこまでおど…

血と暴力の国~血が流れなくても暴力がなくても、世界は血と暴力の国である~

≪内容≫ ヴェトナム帰還兵のモスは、メキシコ国境近くで、撃たれた車両と男たちを発見する。麻薬密売人の銃撃戦があったのだ。車には莫大な現金が残されていた。モスは覚悟を迫られる。金を持ち出せば、すべてが変わるだろう…モスを追って、危険な殺人者が動…

水の精-ウンディーネ-~300冊以上読んだ中で一番最低な男~

≪内容≫ 妖しい森で道に迷った騎士フルトブラントは、湖の岸辺に立つ一軒の漁師小屋にたどり着く。そこで出会ったのは、可憐にして妖艶、無邪気で気まぐれな美少女ウンディーネだった。恋に落ちた二人は結婚式をあげるが…。水の精と人間の哀しい恋を描いたド…

若きウェルテルの悩み~ゲーテから学ぶ感情表現の美しさ~

≪内容≫ ゲーテ自身の絶望的な恋の体験を作品化した書簡体小説で、ウェルテルの名が、恋する純情多感な青年の代名詞となっている古典的名作である。許婚者のいる美貌の女性ロッテを恋したウェルテルは、遂げられぬ恋であることを知って苦悩の果てに自殺する………

奇想と微笑―太宰治傑作選/森見登美彦~DAZAIは割とお茶目さんなのである~

≪内容≫ 中学校の国語の時間。「走れメロス」の音読テープに耳をふさいだ森見少年は、その後、くっついたり離れたりを繰り返しながらも、太宰の世界に惹かれていった―。読者を楽しませることをなによりも大切に考えた太宰治の作品群から、「ヘンテコであるこ…

ピンポン②~自分の生き方次第で誰でも空間と次元を移動できる~

≪内容≫ 原っぱのど真ん中に卓球台があった。どういうわけか、あった。僕は毎日、中学校でいじめられている。あだ名は「釘」。いじめっ子の「チス」に殴られている様子は、まるで釘を打っているみたいに見えるからだ。スプーン曲げができる「モアイ」もいっし…

ピンポン①/パク・ミンギュ~強い人間と弱い人間→いじめと想像力の話→そして愚痴になった~

≪内容≫ 原っぱのど真ん中に卓球台があった。どういうわけか、あった。僕は毎日、中学校でいじめられている。あだ名は「釘」。いじめっ子の「チス」に殴られている様子は、まるで釘を打っているみたいに見えるからだ。スプーン曲げができる「モアイ」もいっし…

指の骨/高橋弘希~死んだまま、静かに澄んでいた~

≪内容≫ 太平洋戦争中、南方戦線で負傷した一等兵の私は、激戦の島に建つ臨時第三野戦病院に収容された。最前線に開いた空白のような日々。私は、現地民から不足する食料の調達を試み、病死した戦友眞田の指の骨を形見に預かる。そのうち攻勢に転じた敵軍は軍…

IT/スティーヴン・キング~「忘却」は大人を守り、子供を幽霊に変える。~

≪内容≫ 一本の電話が、六人それぞれの平穏を破る。長いあいだ記憶の底に眠っていたものを、揺り覚ます。二十七年前、ある場所で、あることが起こった。そして、ひとつの約束がなされた。いま、その時がきたのだ。「さあ帰るんだ、故郷の町へ」。だれもそれを…

「帰還兵はなぜ自殺するのか」を読んで

≪内容≫ ピュリツァー賞作家が「戦争の癒えない傷」の実態に迫る傑作ノンフィクション。内田樹氏推薦! 本書に主に登場するのは、5人の兵士とその家族。 そのうち一人はすでに戦死し、生き残った者たちは重い精神的ストレスを負っている。 妻たちは「戦争に行…

ハックルベリ・フィンの冒険~本当の正しさに辿り着くために地獄を覚悟しなければならない。~

≪内容≫ ハック・フィンにとって大切なもの―勇気、冒険、そして、自由。窮屈な生活から抜け出すために、ハックは黒人ジムを相棒に、ミシシッピ川を下る逃亡計画をはかる。途中で出会う人人は、人種も生活も考えもバラバラ。何度も危険にさらされながら、他人…

送り火/高橋弘希~行きはよいよい帰りは怖い・・・主人公は帰れたのでしょうか~

≪内容≫春休み、東京から山間の町に引っ越した中学3年生の少年・歩。新しい中学校は、クラスの人数も少なく、来年には統合されてしまうのだ。クラスの中心にいる晃は、花札を使って物事を決め、いつも負けてみんなのコーラを買ってくるのは稔の役割だ。転校を…

サリンジャー選集 (別巻1) ハプワース16、一九二四~神に祈ろうが問題は全て自己の内にある~

≪内容≫ グラース家の長男、7歳のシーモア・グラースが、1924年の夏休みにメイン州のキャンプ地・ハプワースに来てから16日目に家族に送った長い手紙を、1965年に弟バディがタイプライターで書き写している、という形式で叙述される書簡体小説。シーモアの、…

我が父サリンジャー~サリンジャー、カモメに激怒する~

≪内容≫ 今でも隠遁生活を続けているアメリカ文学の巨匠サリンジャー。ドイツ人女性との最初の結婚、英国貴族の娘との再婚、隠遁生活をコーニッシュに求めた理由など、多くの謎に包まれた彼の実像をすべて明らかにした娘の回想録。 サリンジャー読んでるとす…

ナイン・ストーリーズ/サリンジャー~バナナフィッシュにうってつけの日の謎~

≪内容≫ バナナがどっさり入っているバナナ穴に行儀よく泳いでいき、中に入ると豚みたいにバナナを食べ散らかすバナナフィッシュ。あんまりバナナを食べ過ぎて、バナナ穴から出られなくなりバナナ熱にかかって死んでしまうバナナフィッシュ……グラース家の長兄…

大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア-序章/サリンジャー~愛が悲しいものだということを神は知っている。~

≪内容≫ 画一化された価値観を強いる現代アメリカ社会にあって、繊細な感受性と鋭敏な洞察力をもって個性的に生きようとするグラース家の七人兄妹たち。彼らの精神的支柱である長兄シーモアは、卑俗な現実を嫌悪し、そこから飛翔しようと苦悶する―。ついに本…

サリンジャー選集(2) 若者たち~理想はリアルからすごく遠い場所~

≪内容≫ ライ麦畑の原型「気ちがいのぼく」やホールデンの兄ヴィンセントの物語も収録。 ずーっとサリンジャーを読んでいるので、しばらくサリンジャー記事になってしまいます。サリンジャーの「ナインストーリーズ」と「フラニーとズーイ」はすでに半年くら…

サリンジャー戦記/村上春樹・柴田元幸~キャッチャーはかなり怖い本です~

≪内容≫ サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の新訳を果たした村上春樹が、翻訳仲間の柴田元幸と共にその魅力、謎、すべてを語り尽くす。ホールデン少年が語りかける「君」とはいったい誰なのか?村上が小説の魔術(マジック)を明かせば、柴田はホー…

グランド・マザーズ/ドリス・レッシング~美は無知を隠すし、人は美にそれ以上を求めない~

≪内容≫ 幼い頃から双子の姉妹のように育ったロズとリル。二人は今、各々息子と孫娘を連れて、光る海の見えるレストランのテラスで、昼下がりの幸福なひと時を過ごしている。だがこの何気ない家族の風景にはある秘密が隠されていた…。互いに相手の息子との恋(…

人間以前/フィリップ・K・ディック~十二歳までの子供は魂のない人間以前~

≪内容≫ 人間と認められるのは12歳以上、12歳未満の子供は人間と認められず、狩り立てられてしまう……衝撃のディストピアを描いた表題作を、新訳で収録。長篇『ユービック』と同一設定の中篇「宇宙の死者」、ディック短篇の代表作として知られる現実崩壊SF「地…

誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち②彼らの痛みの何百万分の一をそれぞれが少しずつ背負うことで、それは社会の痛みとして、共通の痛みとして共通の財産にはならないのだろうか。

≪内容≫ ファミリーホーム―虐待を受け保護された子どもたちを、里子として家庭に引き取り、生活を生にする場所。子どもたちは、身体や心に残る虐待の後遺症に苦しみながらも、24時間寄り添ってくれる里親や同じ境遇の子どもと暮らし、笑顔を取り戻していく「…

誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち①私は虐待も出来ないけど、被虐児と向き合うことも出来ない

≪内容≫ ファミリーホーム―虐待を受け保護された子どもたちを、里子として家庭に引き取り、生活を生にする場所。子どもたちは、身体や心に残る虐待の後遺症に苦しみながらも、24時間寄り添ってくれる里親や同じ境遇の子どもと暮らし、笑顔を取り戻していく「…

グリム童話―メルヘンの深層~メルヘンは残酷な物語で溢れている~

≪内容≫ 「赤ずきんちゃん」「白雪姫」「ヘンゼルとグレーテル」…。聖書とならんで世界中でもっとも読まれているグリム童話。本書は、現代思想や精神分析の知見をとおし、メルヘンの十九世紀的深層を性とエロティシズム、暴力と残虐性、女性などの観点から、…

第四解剖室/スティーヴン・キング~やさしい少年が書いたやさしい物語たち~

≪内容≫ 私はまだ死んでいない、死んでいないはずだ。ゴルフをしていて倒れた、ただそれだけだ。それだけなのに。だが、目の前にある解剖用の大鋏は腹へと迫ってくる……切り刻まれる恐怖を描いた標題作のほか、ホラーからサスペンス、ファンタジー、O・ヘンリ…

ローズマリーの赤ちゃん~オカルトホラー×アメリカ的ユーモア=めっちゃ面白い~

≪内容≫ マンハッタンの古いアパートに、若い夫婦者が越してきた。やがて妻のローズマリーは身篭もり、隣人の奇妙な心遣いに感謝しながらも、妊娠期特有の情緒不安定に陥っていく。彼女は、アパートで何か不気味なことが進行している、という幻想にとり憑かれ…

エス/鈴木 光司~神が唯一できないことを、人はする~

≪内容≫ 映像制作会社に勤める安藤孝則は、ネット上で生中継されたある動画の解析を依頼される。それは、中年男の首吊り自殺の模様を収めた不気味な映像だった。孝則はその真偽を確かめるため分析を始めるが、やがて動画の中の男が、画面の中で少しずつ不気味…

生と死の幻想/ 鈴木 光司 ~家族を守るために闘うはお父ちゃん~

≪内容≫ 平和で安全な世界でなければ生きる価値はない、と思う人間があまりに多すぎやしないか。どんな悪行がはびころうとも死が間近に迫ろうとも、世界は生きるに値する…。生の根源の闇と光を見据えた新世代作家の、現代日本への警告。 リングシリーズとは全…

バースデイ/ 鈴木 光司~リングシリーズのあの時こうなってました話~

≪内容≫ リングの事件発生からさかのぼること三十年あまり。小劇団・飛翔の新人女優として不思議な美しさを放つひとりの女がいた。山村貞子―。貞子を溺愛する劇団員の遠山は、彼女のこころを掴んだかにみえたが、そこには大きな落とし穴があった…リング事件フ…

ループ/鈴木光司~いつからここが現実だと錯覚していた?~

≪内容≫ 科学者の父親と穏和な母親に育てられた医学生の馨にとって家族は何ものにも替えがたいものだった。しかし父親が新種のガンウィルスに侵され発病、馨の恋人も蔓延するウィルスに感染し今や世界は存亡の危機に立たされた。ウィルスはいったいどこからや…

らせん/鈴木光司~ベストセラーというパンデミック~

≪内容≫ “リング”の恐怖に連なる、カルトホラー!幼い息子を海で亡くした監察医の安藤は、謎の死を遂げた友人・高山の解剖を担当し、冠動脈から正体不明の肉腫を発見した。遺体からはみ出した新聞に書かれた数字は「リング」という言葉を暗示していた。 リング…