深夜図書

不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

書評

グリム童話―メルヘンの深層~メルヘンは残酷な物語で溢れている~

≪内容≫ 「赤ずきんちゃん」「白雪姫」「ヘンゼルとグレーテル」…。聖書とならんで世界中でもっとも読まれているグリム童話。本書は、現代思想や精神分析の知見をとおし、メルヘンの十九世紀的深層を性とエロティシズム、暴力と残虐性、女性などの観点から、…

第四解剖室/スティーヴン・キング~やさしい少年が書いたやさしい物語たち~

≪内容≫ 私はまだ死んでいない、死んでいないはずだ。ゴルフをしていて倒れた、ただそれだけだ。それだけなのに。だが、目の前にある解剖用の大鋏は腹へと迫ってくる……切り刻まれる恐怖を描いた標題作のほか、ホラーからサスペンス、ファンタジー、O・ヘンリ…

ローズマリーの赤ちゃん~オカルトホラー×アメリカ的ユーモア=めっちゃ面白い~

≪内容≫ マンハッタンの古いアパートに、若い夫婦者が越してきた。やがて妻のローズマリーは身篭もり、隣人の奇妙な心遣いに感謝しながらも、妊娠期特有の情緒不安定に陥っていく。彼女は、アパートで何か不気味なことが進行している、という幻想にとり憑かれ…

エス/鈴木 光司~神が唯一できないことを、人はする~

≪内容≫ 映像制作会社に勤める安藤孝則は、ネット上で生中継されたある動画の解析を依頼される。それは、中年男の首吊り自殺の模様を収めた不気味な映像だった。孝則はその真偽を確かめるため分析を始めるが、やがて動画の中の男が、画面の中で少しずつ不気味…

生と死の幻想/ 鈴木 光司 ~家族を守るために闘うはお父ちゃん~

≪内容≫ 平和で安全な世界でなければ生きる価値はない、と思う人間があまりに多すぎやしないか。どんな悪行がはびころうとも死が間近に迫ろうとも、世界は生きるに値する…。生の根源の闇と光を見据えた新世代作家の、現代日本への警告。 リングシリーズとは全…

バースデイ/ 鈴木 光司~リングシリーズのあの時こうなってました話~

≪内容≫ リングの事件発生からさかのぼること三十年あまり。小劇団・飛翔の新人女優として不思議な美しさを放つひとりの女がいた。山村貞子―。貞子を溺愛する劇団員の遠山は、彼女のこころを掴んだかにみえたが、そこには大きな落とし穴があった…リング事件フ…

ループ/鈴木光司~いつからここが現実だと錯覚していた?~

≪内容≫ 科学者の父親と穏和な母親に育てられた医学生の馨にとって家族は何ものにも替えがたいものだった。しかし父親が新種のガンウィルスに侵され発病、馨の恋人も蔓延するウィルスに感染し今や世界は存亡の危機に立たされた。ウィルスはいったいどこからや…

らせん/鈴木光司~ベストセラーというパンデミック~

≪内容≫ “リング”の恐怖に連なる、カルトホラー!幼い息子を海で亡くした監察医の安藤は、謎の死を遂げた友人・高山の解剖を担当し、冠動脈から正体不明の肉腫を発見した。遺体からはみ出した新聞に書かれた数字は「リング」という言葉を暗示していた。 リング…

リング/鈴木光司~おまえにとって最大の敵は、その貧弱な想像力だ~

≪内容≫ 同日の同時刻に苦悶と驚愕の表情を残して死亡した四人の少年少女。雑誌記者の浅川は姪の死に不審を抱き調査を始めた。―そしていま、浅川は一本のビデオテープを手にしている。少年たちは、これを見た一週間後に死亡している。浅川は、震える手でビデ…

夜行/森見 登美彦~「見えない」と「存在しない」はイコールではない~

≪内容≫ 僕らは誰も彼女のことを忘れられなかった。私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったか…

罪と罰/ドストエフスキー~人を一人殺せば人殺しだが、数千人殺せば英雄である~

≪内容≫ 鋭敏な頭脳をもつ貧しい大学生ラスコーリニコフは、一つの微細な罪悪は百の善行に償われるという理論のもとに、強欲非道な高利貸の老婆を殺害し、その財産を有効に転用しようと企てるが、偶然その場に来合せたその妹まで殺してしまう。この予期しなか…

潤一郎ラビリンス〈2〉マゾヒズム小説集~マゾヒストの始まりから終わりまで~

≪内容≫ 「饒太郎」「蘿洞先生」「続蘿洞先生」「赤い屋根」「日本に於けるクリップン事件」の五篇を収める。自らマゾヒストを表明した主人公饒太郎。日本に生れたこと後悔すると言いながらも、西欧の書物から被虐の喜びを求めるひとが世界の至るところに居る…

雪国/川端 康成~この世界と黄泉の国の違いは?生者と死者の区別は?~

≪内容≫ 無為徒食の男、島村は、駒子に会うために雪国の温泉場を再訪した。駒子はいいなずけと噂される好きでもない男の療養費のために芸者をしている。初夏の一夜以来、久々に会えた島村に駒子は一途な情熱を注ぐが、島村にとって駒子はあくまで芸者。島村は…

伊豆の踊り子/川端 康成~同じものを見ても一つになれるわけじゃない~

≪内容≫ 旧制第一高等学校に入学した川端康成(1899‐1972)は、1918(大正7)年秋、初めて伊豆に旅をして、天城峠を越えて下田に向かう旅芸人の一行と道連れになった。ほのかな旅情と青春の哀歓を描いた青春文学の傑作「伊豆の踊子」のほか、祖父の死を記録した「…

潤一郎ラビリンス〈1〉/谷崎 潤一郎~快楽に導くのは究極の我慢~

≪内容≫ 荷風の激賞をうけ颯爽文壇に登場した谷崎。―清吉と云う若い刺青師の腕きゝがあった。彼の年来の宿願は、光輝ある美女の肌を得て、それへ己れの魂を刺り込む事であった。官能的耽美的な美の飽くなき追求を鮮烈に描く「刺青」ほか、「麒麟」「少年」「…

車輪の下/ヘルマン・ヘッセ~挫折したときに故郷に帰りたいと思う人は、なぜそう思うのか。~

《内容》 ひたむきな自然児であるだけに傷つきやすい少年ハンスは、周囲の人々の期待にこたえようとひたすら勉強にうちこみ、神学校の入学試験に通った。だが、そこでの生活は少年の心を踏みにじる規則ずくめなものだった。少年らしい反抗に駆りたてられた彼…

眼球譚(初稿)/バタイユ~この世界がまっとうに思えない人たちへ~

《内容》 一九二八年にオーシュ卿という匿名で地下出版されたバタイユの最初の小説。本書は、著者が後に新版として改稿したものと比べて全篇にわたって夥しい異同がある。サド以来の傑作と言われるエロティシズム文学として、「球体幻想」を主軸に描き上げた…

東京奇譚集/村上春樹~要らないものを要らないと自分で理解するための読書~

≪内容≫ 肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却……。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生…

青の炎/貴志祐介~映画と小説って似て非なるよな、と実感した話~

≪内容≫ 櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭の一家団欒を踏みにじる闖入者が現れた。母が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根だった。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、…

1Q84/村上春樹~もっとも見慣れた場所ともっとも得意とする行為が生む二つの月~

≪内容≫ 「こうであったかもしれない」過去が、その暗い鏡に浮かび上がらせるのは、「そうではなかったかもしれない」現在の姿だ。書き下ろし長編小説。 う~ん・・・。 この小説は今まで(色彩~も含む)の内容とちょっと違う印象です。 今までの村上さんの作品の…

ロング・グッドバイ/レイモンド・チャンドラー~金と美では生き抜けない。~

≪内容≫ 私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは…

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/村上春樹~才能があるとかないとか~

≪内容≫ 多崎つくるは鉄道の駅をつくっている。名古屋での高校時代、四人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、四人から絶縁を申し渡された。理由も告げられずに。死の淵を一時さ迷い、漂うように生きてきたつくるは、新…

ハリネズミの願い/トーン・テレヘン~コミュニケーションには傷付ける勇気が必要~

≪内容≫ ネガティブすぎるハリネズミの姿が共感を呼んで9万5000部。本屋大賞受賞の海外小説 自分のハリが大嫌いで、ほかの動物たちとうまく付き合えないハリネズミ。突然みんなを自宅に招待しようと思い立つが、本当にやってきたらとんでもないことが起こりそ…

ティファニーで朝食を/カポーティ~普通よりは自然になりたいんだ~

≪内容≫ 第二次大戦下のニューヨークで、居並ぶセレブの求愛をさらりとかわし、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー。気まぐれで可憐、そして天真爛漫な階下の住人に近づきたい、駆け出し小説家の僕の部屋の呼び鈴を、夜更けに鳴らしたのは他なら…

また、同じ夢を見ていた/住野よる~正論側のタイミングでやるから上手くいかないこともある~

≪内容≫ 友達のいない少女、リストカットを繰り返す女子高生、アバズレと罵られる女、一人静かに余生を送る老婆。彼女たちの“幸せ"は、どこにあるのか。「やり直したい」ことがある、“今"がうまくいかない全ての人たちに送る物語。 住野さんは三作目ですが、…

ふたご/藤崎彩織~好きだから頑張る、それが一番強いし輝いてる~

≪内容≫ 彼は、わたしの人生の破壊者であり、創造者だった。異彩の少年に導かれた孤独な少女。その苦悩の先に見つけた確かな光。SEKAI NO OWARI Saori、初小説! うちの会社に うがい・手洗い・ドラゲナイ っていう標識がありました。 私セカオワ知識ほとんど…

心臓を貫かれて/マイケル・ギルモア~愛の応酬が暴力なら、愛と暴力はイコールになる~

≪内容≫ 僕の兄は罪もない人々を殺した。何が兄の中に殺人の胎児を生みつけていったのか?―四人兄弟の末弟が一家の歴史に分け入り、衝撃的な「トラウマのクロニクル」を語り明かす。暗い秘密、砕かれた希望、歴史の闇から立ち現われる家族の悪霊…殺人はまず、…

死刑囚最後の晩餐/死ぬ前の最後の食事・・・何食べたい?

≪内容≫ アメリカには死刑執行直前の囚人が食べたいものをリクエストできる権利がある。極限の精神状態において、死刑囚たちは最後の食事にいったい何を望んだのか。彼らの最後の食事のメニューを詳細に調査した興味深い一冊。 私の大好きな桜庭一樹さんが読…

老人と海/ヘミングウェイ~色んな便利機能なくても生きていけるよね~

≪内容≫ キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食い…

乳と卵/川上未映子~ジェンダーレス、どうでしょう?~

≪内容≫ 第138回芥川賞・受賞作品。現代の樋口一葉の誕生! 初潮を迎える直前で無言を通す娘と、豊胸手術を受けようと上京してきた母親、そしてその妹である「わたし」が三ノ輪のアパートで過ごす三日間の物語。三人の登場人物の身体観と哲学的テーマが鮮やか…