深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

道ありき/三浦綾子~いい加減に生きることに慣れたら私はダメになってしまう~

《内容》 教員生活の挫折、病魔――絶望の底へ突き落とされた著者が、十三年の闘病の中で自己の青春の愛と信仰を赤裸々に告白した心の歴史。 なにかの記事かamazonのコメントかなんかで「読書に興味を持ったのは三浦綾子の氷点。娘を殺した犯人の子供を養子に…

戦争童話集/今江 祥智~生を絶対肯定するのはいつだって戦争の物語だった~

《内容》 「わたし、馬と話ができるのよ…」あのこはそういった。村の遠くでサイレンがなり、高い空に、きれいな鳥みたいな飛行機が、いくつもいくつも町へむかって飛ぶのが見えた。町が空襲にあったのは山あいの村からあのこが消えた夜のことだった。日本が…

水木しげるのラバウル戦記/水木しげる~一致団結とか挙国一致とか、言葉とは希望や願望でしかないのだ~

《内容》 太平洋戦争の激戦地ラバウル。水木二等兵は、その戦闘に一兵卒として送り込まれた。彼は上官に殴られ続ける日々を、それでも楽天的な気持ちで過ごしていた。ある日、部隊は敵の奇襲にあい全滅する。彼は、九死に一生をえるが、片腕を失ってしまう。…

本当に強い人、強そうで弱い人 心の基礎体力の鍛え方 /川村則行~もし私が私じゃなかったらきっと今よりはマシな人生だったに違いない~

《内容》 職場で、家庭で、友人関係で……なんとなく”生きづらさ”を感じているあなたへ。「心が強い」とはどういうことだろうか? 「心の基礎体力」の鍛え方の第一歩は、自分の弱さを受け入れること。自分を知り、心と体の関係を知れば、強く生きるコツが見つか…

古都/川端康成~自分にとって他人の人生は幻でしかない~

《内容》 捨子ではあったが京の商家の一人娘として美しく成長した千重子は、祇園祭の夜、自分に瓜二つの村娘苗子に出逢い、胸が騒いだ。二人はふたごだった。互いにひかれあい、懐かしみあいながらも永すぎた環境の違いから一緒には暮すことができない……。古…

鸚鵡楼の惨劇/真梨幸子~欲望を上手に隠した善人かぶれで溢れかえるこの世界に~

《内容》 1991年、バブル期の西新宿。人気エッセイストの蜂塚沙保里は、名声と、超高級マンションでのセレブライフを手に入れた。でも―1962年から2013年―半世紀にわたり、忌まわしき未解決事件の記憶が、新たな悲劇を引き起こす―! うぉおおおおお! って最後…

6月31日の同窓会/真梨 幸子~大人になっても付きまとう女子高の呪い~

《内容》 「案内状が届くと死ぬ」その伝説が現実に―!?伝統ある女子校・蘭聖学園の卒業生が連続死する。OGの弁護士・松川凛子は、死亡した女たちが、存在しないはずの「6月31日」に開催される同窓会の案内状を受け取っていたことを突き止める。やがて凛子にも…

白夜/ドストエフスキー~不器用なインテリ青年の一夜の恋~

《内容》 ペテルブルグに住む貧しいインテリ青年の孤独と空想の生活に、白夜の神秘に包まれた一人の少女が姿を現し、夢のような淡い恋心が芽生え始める頃、この幻はもろくもくずれ去ってしまう……。 ドストエフスキーってめっちゃ喋るよなwwwwwwwww…

夜葬/最東 対地~死者の顔をくり抜いたソコに白米を盛り食べ分けるという奇習怖すぎ~

《内容》 ある山間の寒村に伝わる風習。この村では、死者からくりぬいた顔を地蔵にはめ込んで弔う。くりぬかれた穴には白米を盛り、親族で食べわけるという。この事から、顔を抜かれた死者は“どんぶりさん”と呼ばれた―。スマホにメッセージが届けば、もう逃…

鬼/今邑 彩~どんでん返し満載のホラー寄りミステリー~

《内容》 引きこもっていた息子が、突然元気になった。息子を苛めていた子が、転校するというのだが…「カラス、なぜ鳴く」。かくれんぼが大好きだったみっちゃん。夏休みのある日、鬼になったみっちゃんは、いつまで待っても姿をあらわさなかった。そして、…

女に生まれてモヤってる!/中野 信子, ジェーン・スー~女に生まれたらイージーモードは本当?~

《内容》 「女らしさ」は誰のため?敵と味方とルールを再検証する。恋愛と結婚、私たちの戦略。なぜ女は自信を持ちづらいのか。ジャストフィットな生き方は自分で決める。 "モヤってる"っていうのがいいなぁ、と思いました。怒りでも哀しみでもなく、"うーん…

東京ディストピア日記/桜庭一樹~2021年コロナ禍どうだった?~

《内容》 作家・桜庭一樹が仔細に記録する2020年1月~2021年1月。分断が進むこの世界で、私は、あなたは、どこにいて何を思考する、誰なんだろう――?オリンピック延期、和牛券、休業要請、#うちで踊ろう、Zoom飲み会、アベノマスク、ステイ・ホーム太り、自粛…

精選女性随筆集 第四巻 有吉佐和子・岡本かの子~作品の源は怒りであり、繊細な人は常に怒りを持っている~

《内容》 ベストセラー作家・有吉佐和子の若き日の随筆と、マイノリティーの視点が光るルポルタージュ、歌人、小説家として生を燃焼した岡本かの子が夫と息子について書いた文章、書簡を中心に編む。 岡本太郎の母・岡本かの子さんの小説を読みたいとずっと…

夜市/恒川 光太郎~あの日僕は幼い弟と引き換えに野球の才能を買った~

《内容》 大学生のいずみは、高校時代の同級生・裕司から「夜市にいかないか」と誘われた。裕司に連れられて出かけた岬の森では、妖怪たちがさまざまな品物を売る、この世ならぬ不思議な市場が開かれていた。夜市では望むものが何でも手に入る。小学生のころ…

女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。/ ジェーン・スー~女らしい見た目ってストイックの象徴以外の何物でもない~

《内容》 断捨離?ミニマリスト?しらんがな!赤い口紅・七分丈レギンス・自撮り・オーガニック・京都・ヨガ…女泣かせの「甲冑」が今日も私を締め付ける! 女の甲冑って洋服のことです。洋服に限らずファッションやメイクにヘアスタイルに体系維持。なんでそんな…

タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後 40代女子 叫んでもいいですか/辛酸なめ子~美しさや努力が絶対的に肯定されることだから、この2つを手にした人のやることは穢さが見えにくいのだ。~

《内容》 思わず声が出てしまう瞬間を語る。 辛酸なめ子さんというお名前は聞いたことがあったのですが、本は初めて。なんで手に取ったかって、タイトルのイラストのタピオカミルクティーの内容に共感したからwもはやむっちゃむっちゃと永遠に嚙んでてタピ…

本に埋もれて暮らしたい/桜庭一樹~”考え続ける”は才能の一種~

《内容》 旬な作家サクラバカズキの日常と、ドタバタの日々に癒しと活力を与えてくれた本の数々を紹介する、大人気WEB連載の書籍化第4弾。どんなに忙しくったって、やっぱり本がなくては生きてゆけない! のだ。 2011年、10年前の本なんですよね。 でも…

桜庭一樹のシネマ桜吹雪/桜庭一樹~人間というものは本質的に理解できないものかもしれないという”畏れ”こそが映画である~

《内容》 一本の映画で二度三度とおいしい。物語作家ならではの洞察が光る珠玉のエッセイ集。 桜庭さんはこれもそうなんだけど、結構自分の感想が本になることが多い。 本に埋もれて暮らしたい (桜庭一樹読書日記) 作者:桜庭 一樹 東京創元社 Amazon 桜庭さ…

【映画】セックス・アンド・ザ・シティ/SATC~欲しいものを手にするバイタリティが鬱憤を消化する~

《内容》 セックス・コラムニストのキャリーは理想の男性ミスター・ビッグと一緒に暮らすため瀟洒なアパートを購入し、次いで結婚も決意する。PR会社社長のサマンサは俳優を目指す恋人スミスを売り込むためにL.A.に引っ越し、再婚したシャーロットは中国から…

【映画】ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー~夫や父親や友になるすべを僕は知らない 、なれるのは"作家"だけ~

《内容》 1939年の華やかなニューヨーク。作家を志す20歳のサリンジャーは編集者バーネットと出会い短編を書き始め、その一方で劇作家ユージン・オニールの娘ウーナと恋に落ちる。だが太平洋戦争が勃発し、サリンジャーは戦争の最前線での地獄を経験すること…

フランケンシュタイン/メアリーシェリー~誰の心にも怪物が住み着いている~

《内容》 若き科学者ヴィクター・フランケンシュタインは、生命の起源に迫る研究に打ち込んでいた。ある時、ついに彼は生命の創造という神をも恐れぬ行いに手を染める。だが、創り上げた“怪物”はあまりに恐ろしい容貌をしていた。故郷へ逃亡した彼は、醜さゆ…

鳥~実は鳥が大群で襲ってきたら超怖い~

《内容》 美しいブロンドの女性メラニー・ダニエルス(ティッピー・ヘドレン)が、婚約者のミッチ・ブレナー(ロッド・テイラー)に会いにボデガ・ベイにやってくる。カモメに襲われる彼女。その後、何千羽もの鳥が町に群れをなしてやってきて、子供や住民た…

背高泡立草/古川真人~心の奥底で感じることこそ向き合うべき自分の運命~

《内容》 草は刈らねばならない。そこに埋もれているもは、納屋だけではないから―。長崎の島に暮らし、時に海から来る者を受け入れてきた一族の、歴史と記憶の物語。第162回芥川賞受賞作。 納屋と言ったら村上春樹。 螢・納屋を焼く・その他の短編(新潮文庫…

【映画】ハウス・ジャック・ビルト~引き金を引くのはいつも他人~

《内容》 1970年代の米ワシントン州。建築家になる夢を持つハンサムな独身の技師ジャックはあるきっかけからアートを創作するかのように殺人に没頭する…。彼の5つのエピソードを通じて明かされる、“ジャックの家”を建てるまでのシリアルキラー12年間の軌跡。…

【映画】ミッドサマー~夢落ちで終わらない不思議の国のアリスの世界~

《内容》 アメリカで暮らす大学生のダニーと恋人のクリス、その仲間たちは、交換留学生であるペレの故郷スウェーデンで夏至(ミッドサマー)に行われる祝祭に誘(いざな)われる。その村では、90年ごとに9日間の浄化の儀式が行われ、人々は着飾って様々な出…

【映画】メアリーの総て~「われ思う、ゆえにわれあり」は、ほとんどの女に絶対わからないに違いない~

《内容》 19世紀イギリス。小説家を夢見るメアリーは“異端の天才”と噂される、妻子ある詩人パーシー・シェリーと出会う。互いの才能に強く惹かれあった二人は、情熱に身を任せ、駆け落ちする。愛と放蕩の日々は束の間、メアリーに襲い掛かる数々の悲劇。失意…

小説のように/アリス・マンロー~事件と呼ぶには大袈裟な悪意や人の卑しさを詰め込んだ、スカっとするようでイヤな汗が流れる短編集。~

《内容》 子持ちの若い女に夫を奪われた音楽教師。やがて新しい伴侶と恵まれた暮らしを送るようになった彼女の前に、忘れたはずの過去を窺わせる小説が現われる。ひとりの少女が、遠い日の自分を見つめていた―「小説のように」。死の床にある青年をめぐる、…

カステラ/パク・ミンギュ~なぜこの電車は、人生は、この世は、いつも揺れているんだろう~

《内容》 現代韓国文学の人気作家・パク・ミンギュのロングセラー短編小説集。洒脱な筆致とユーモアあふれる文体で、主人公の若者たちを取り巻く「就職難」「格差社会」「貧困の様相」etcを描きながら、彼ら彼女たちに向ける眼差しを通して、人間存在への確…

推し、燃ゆ/宇佐見りん~あたしというすべてを賭けて推しを推すとき、あたしはいつになく満ち足りている~

《内容》 推しが炎上した。ままならない人生を引きずり、祈るように推しを推す。そんなある日、推しがファンを殴った。 web.kawade.co.jp 「推し」という単語がよく聞かれるようになったのはいつからだろう?私にはピンとこないものですが、池袋あたりで同じ…

つみびと/山田 詠美~私の娘は、その頃、日本じゅうの人々から鬼と呼ばれていた。~

《内容》 灼熱の夏、彼女はなぜ幼な子二人を置き去りにしたのか。フィクションでしか書けない“現実”がある。虐げられる者たちの心理に深く分け入る迫真の長編小説。 この小説は、実際に起きた事件「大阪2児餓死事件」をモチーフにしています。同じくこの事件…